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光の風
【ファンタジー 恋愛小説】

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光の風 〈聖地篇〉-13

一瞬、視線をカルサに向けた。

「急に言われても今更だな。ただ忘れないでいてくれればいい。」

周りは徐々に終わりの雰囲気を出し始めていた。いつしか守麗王と沙更陣の姿もない。

ジンロが視線を周りに向けて間を置いてからカルサは呟いた。いつもどおりの彼で。

「部屋に戻る。」

そう言って歩き始めた。すれ違いざまにジンロの了承の声が耳に入ってくる。数歩進み立ち止まった。

「ありがとう…ジンロ。」

背中を向けたままの言葉。顔が少し後ろを向こうとしついたが、表情は映らなかった。

そして再び歩き始めた。去り行くカルサをジンロは姿が見えなくなるまで見送る。その笑顔はカルサが生んだものだった。



陽は落ち月が昇る頃、広間には誰の姿も無くなった。

一人部屋で浅い眠りにつくカルサを小さなノック音が現実に引き戻した。しかし一連の疲れからかカルサは目を開けることができなかった。

しばらくして、ドアを開く音が聞こえる。足音がだんだん近付き、カルサの横で止まった。

それでも目を開けることはない。

「カルサ…寝てるの?」

かすれるような小さな声でリュナは問いかける。カルサの反応はない。

カルサの髪を愛しそうに撫でたあと、ベッドに腰かけ重なるようにカルサの上にもたれかかった。

「疲れたよね、今まで…心も体も。」

リュナは体を起こし、カルサの髪を何度も撫でた。大事なものを癒すように丁寧に何度も撫でた。

その目は淋しい色で満ちている。

「カルサ…。」

愛しい人の名を呟く。言いたい言葉がなかなか出ない。心の中で想いが溢れ涙にかわりそうだった。



「どんな言葉で伝えたらいいの?」

リュナの声が小さく部屋に響く。彼女の願い、それはカルサには分からなかった。黙ったまま次の言葉を待つ。

リュナは気付いていた。

「カルサ、お願い。貴方が抱えているものを教えて?」

そう呟き再び彼の体に寄り掛かる。その時、貴方の力になりたいの。という声が聞こえた気がした。

カルサに一瞬記憶がよみがえる。前にも聞いたことがあるセリフだった。

風神として初めて来国し謁見をした日。あの日も同じ事を言っていた。


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