光の風 〈聖地篇〉-11
「どうした？」
「え？ううん、用はないんだけど探しちゃった。」
そうか。と笑顔で応え、カルサは千羅を紹介しようと促した。千羅は手摺りから体を浮かしお辞儀をする。
「初めまして、地神・千羅と申します。どうぞよろしく、風神。」
「リュナ・ウィルサと申します。こちらこそ、よろしくお願いします。」
リュナも同じ様にお辞儀をしてみせた。千羅はこうして正面にリュナを見るのは初めてだった。
絶やさない笑顔、無条件の愛情、彼女の全てがカルサを支えている。守りの風。
「千羅には一緒に行動している御剣がいるんだ。」
「本当ですか？」
「女性なんですけどね。水神・瑛琳と言います。」
残念ながらここには来ていないと告げると、リュナは残念そうに納得した。
「瑛琳は責任感が強く、優しい、とても魅力のある女性です。貴女のように。」
千羅はまっすぐリュナを見つめ、リュナもそれを受けとめた。
「きっとお互いが気に入るでしょう。」
千羅の表情を、言葉を感じリュナに分かった真実がある。優しい笑顔、リュナは千羅の目を見て話す。
「千羅さんにとって…瑛琳さんはとても大切な方なんですね。一人の女性として。」
その言葉に二人は驚いた。カルサは思わず千羅の顔を見る。いつしか千羅は微笑んでいた。
「貴女には適いそうにない。」
千羅の言葉にカルサはまぬけな顔して驚いていた。目を大きくし、口も開いたまま。
「カルサ、お前鈍すぎ。」
呆れながらカルサの肩を軽く叩く。そんなに表情に出なくてもカルサの頭の中はそれ以上ないくらいグルグル回っていた。
リュナもそれを見て笑う。千羅は再びリュナに視線を戻し向き合った。カルサは自分の中に必死で二人の動きは全く視界には入っていない。
「カルサとは古い馴染みなんです。」
そうなんですか。と相づちをうったはいいが、リュナは気になった。それにしては今までカルサから千羅の話は聞いたことがない。
地神、水神といえば五大元素の御剣。自分達に一番近い仲間といえる人物なのに、今日こうして出会わなければきっと話を聞く事もなかったろう。
顔には出さないが、リュナの中に不安が広がった。
「彼とは繋がりが深い。それでもあまり関わってはいないのは事実です。」
千羅の切ない表情をリュナは見逃さなかった。
「彼は自分からオレたちの事を話したがらない。それは仕方がないことなんです。」
なぜ？その言葉が出なかった。リュナの目に映ったのはいつか見た表情。いつかカルサが見せた何も聞けなくする表情だった。