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光の風
【ファンタジー 恋愛小説】

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光の風 〈聖地篇〉-10

「へぇ。どんな?」

「私のこと、何も知らないって思ってるでしょ。」

その瞬間、二人は固まった。千羅はおそらく、それを言われた時のカルサと同じ反応をした。

そして吹き出す。千羅は肩を揺らしながら声を殺して笑った。

「いいぜ、おもいきり笑えよ。」

カルサのその言葉を合図に千羅は大声で笑い始めた。カルサは顔を赤くしむくれている。

「おまえ一生リュナに勝てねぇよ!強いわ!」

予想以上に笑い続ける千羅に腹を立てるかと思ったが、カルサは笑った。そして庭を眺める。

(一生、か…。)

カルサの中に思いがめぐる。願っても無駄な想い。そんなカルサの様子に気付き千羅は笑いを止めた。

「凄いんだよ。リュナはオレの心を見抜いたんだ。」

さっきのリュナとの会話を思い出す。安心するような、穏やかな表情。

こんなカルサを見るのは初めてかもしれない。千羅は思わず見とれてしまった。

「まだ、彼女に話してないんだろう?」

千羅の問いかけにカルサは苦笑いしてしまう。まだ話していないと、表情で伝えた。

 言うつもりはあるのだろう、でも言えずにいる。カルサの事だ、ケジメはつけるだろう。分かっていても千羅は心配せずにはいられなかった。

 大丈夫なのか?その言葉が喉まで出て、飲み込んだ。

 やがて目の端にリュナの姿が映る。辺りを見回しているところから、何かを探しているようだった。

そして目をバルコニーの方に向けると捜し物が見つかった。カルサだった。

リュナの行動の一部始終を見ていたカルサたちは、リュナの表情を見逃さなかった。

カルサを見つけた時の笑顔、それは凄く眩しいものだった。手を振りながら駈けてくる。

「カルサ!」

部屋二つ分程の広さがあるバルコニーでは、リュナが辿り着くまで時間がかかった。

「幸せだな、お前は。」

あれだけの笑顔で自分の許に寄ってきてくれる、そんな愛しい人がいる事は凄く幸せなこと。

カルサは答えず、優しい微笑みでリュナを待っていた。その表情に千羅も嬉しくなってしまう。

「リュナなら大丈夫だよ、カルサ。二人なら大丈夫だ。」

カルサに聞こえているかどうかも分からないくらい小さな声で囁いた。

リュナが千羅に気付き、笑顔で会釈しながらカルサの前に立った。


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