部活動のスキマに-3
ある日のお昼休み、私は校舎の渡り廊下を抜け、身体を低くして図書室近くの植え込みにしのびこんだ。
そこにひとりの女の子がひそんでいた。
「あおいチャン……」
「いくみチャン……」
私は飛びかかってきたいくみチャンを抱きしめた。
「朝、目がおうた(合った)時」私が言った。「何かお話がありそうやったから、来てみてん。」
「そうやねん、あおいチャン……」
そう言ういくみチャンも私と同じ学年で、同じ地域に住んでた編入仲間だ。
「怖いねん。私の『係』のひと、好きやし他のひとらもええ人なんやけど、ヘタに私らの言葉しゃべったら、『ヨソ者』にされそうで……」
「わかる、わかるで……」そう言って私はいくみチャンの唇に唇を寄せた。いくみチャンは私の胸に手を伸ばして、ブラをするほどでもない乳房を軽くつかんだ。
「あ、そうや。」いくみチャンは私の胸をつかみながら言った。「あおいチャンの『係』、さち子さん言うひとやろ。」
「うん、」私はうなずいた。「どないしたん?」
「あのひと……なんか変わったところ、ある?」
「ないよ。」
私はソッコーで答えた。
ほんとは変わったところ色々ある。
でも、それを親しいいくみチャンにも言えないほど、私もすっかりこの学園に縛られていた。
「あのひと……」いくみチャンが言う。「中学のコとかに、エッチな体験談話させて、それをこっそり録音しとって、イラスト付けてネットに流しとるんやて……」
おやおや、それは完全に私に心当たりのある話でしょ。
ついこの前も、あんなエッチな体験を話したところだし。相当の体験談がネットに流れてそうだ。
でも、私はいくみチャンにあらためて唇を寄せて、いくみチャンの愛撫を味わいながら、心の中にさち子さんの笑顔を思い浮かべてた。
(どうやらさち子さん、タバコを吸うのは私の前でだけみたいね……)
【おしまい】