しにがみハート-1
ここは…何だろう?暗い池がある。宛も無く迷っていると、前から黒い衣装を纏った可愛い女が近づいてきた。
「あなたは明日死にますので〜、覚悟しておいてください〜♪」
「…は?」
「んじゃぁ、私は仕事がありますので〜、また明日ぁ〜。死に際で会いましょう♪」
ひらひらと手を振り、軽やかなスキップで歩いていく女。
「ちょっ…待てぇぇぇぇぇぇ!!!!」
月光が差し込む俺の部屋。全身汗だらけだ。
「なんですか…夢なんですか…。って自分に敬語使うな俺ボケェェェ!!」
真夜中から叫び放題の俺。
迷惑なのは分かってますよ。でも叫びたいんだぁぁぁ!!
『うるさいわよ孝紀ぃぃぃ!!!』
隣の部屋から聞こえる姉・里紗の声。あ、これ俺マジで死ぬかもしれねぇ。
予想が現実になるまでの所要時間:0.23秒。
どかぁぁぁん!!!!
ドアが開く音とは到底思えない効果音と共に姉が現れ、ドアが外れる。
「私の安寧なる睡眠を妨げたわね…ふっふっふ…笑いが止まらないわ!!!これから貴方を…地獄に…♪」
予想してそれが現実になる確率:99.8%。
ちなみに今は午前3時。
「許して下さい里紗様!!何でもしますから!!」
「何でもしてくれんの!?じゃぁ…ダメだ、地獄に落とす以外は脳が機能しないわ。オ・チ・ロ♪」
「ぎゃぁぁぁぁ!!」
午前3時、真夜中の住宅街に俺の悲鳴が鳴り響く。
こうして色んな意味での痛い夜が更けた。
「う…腰が、首が、肩が、ハートが痛む…。」
「そりゃあサブミッションフルコースだもん。私はスッキリ爽快〜♪」
朝御飯の塩鮭を頬張りながら言う。うん、和風。
「りぃさ〜迎えに来たぞ〜♪」
不意に聞こえる男の声。
「あ、暁が来た〜、じゃあ行ってくるわね!!戸締まり夜露死苦!!」
中指をピンと立てて言う姉。
「朝から熱いね〜。行ってらっしゃい。」
「……地獄で待っててね♪」
「…はい。行ってらっしゃいませ…。」
どかぁぁぁん!!
再びドアが外れ、姉が学校に出て行った。
あれはキレかけてるな。うん。
「じゃぁ俺も行きますか…。」
一人寂しく呟く。
「行ってきます俺!!」