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魔女の蝶
【ホラー 官能小説】

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森の中へ-1

それから2年が経ち
シャーロットも18歳になり

父の繊維工場は順調で
たくさんの人夫が
毎日働いていた。


村人の半分は工場で働き
農作業と家畜の世話と
村人みんなで協力しあって
生活していた。


シャーロットの父も
その事を充分に承知の上で
村人を労っていた。


麦の収穫時期には
工場を休ませて
農作業に集中させていた。


それを不服に
思っている者たちもいる。


街の人間である。


街の人間は
産業を持たない者がほとんどで
工場での給金だけが
収入源だった。


麦の収穫時期になると
工場の人夫が足りなくなり
自分達の負担が大きくなるが


シャーロットの父は
その分
街の人間には給金を弾み
労っていたつもりだった。


欲にまみれた街の人間には
収穫で工場の仕事を休む
村人たちに対して
不満を並べる。


その麦のお陰で
パンが食べれている事は
さておいて。


麦の収穫が延びると
街の人間の不満は益々募っていく。


ある日
村人と街の人間との間で
争いが起きてしまう。


「お前らのせいで俺たちは
きつい思いをしてるんだぞ!」


「何言ってるんだ!?
麦を収穫しないと
お前たちの食べているパンだって
買う事が出来なくなるんだぞ!」


「別にお前たちの麦で
パンを食べてる訳じゃ無い!
ちんたらしやがって!」


「何を!?」


村人と街人との
殴り合いの喧嘩まで発展してしまう。


シャーロットの父が
仲裁に入るが
双方引こうとしない。


街の人間が
食ってかかる。


「お前だって社長だかなんだか
知らないが
楽して偉そうにしやがって!」


「何を言うんだ?
その分給金は多めに
やっているだろう?」


「なんだと!?ちっぽけな金で
俺たちは
死にそうな思いをしてるんだ!」


街人は社長である
シャーロットの父を
殴り倒してしまう。


社長は
意識を失い
担架に乗せられ
屋敷に運ばれる。


「お父様!しっかりして!
お父様!!」


シャーロットの呼び掛けにも
父は目を覚まさない。


息はあるものの
三日間
目を開ける事は無かった。


ベッドに横たわる父親は
徐々に痩せていき


街の医者は
なんとか口にスープを含ませるが
飲む事はなかった。


シャーロットは
思い詰め
ふと魔女の森のお話を思い出す。


「そうよ!魔女に助けてもらおう
魔女の力しか
お父様を助けられない!」


シャーロットは無言で
魔女の森に向かうことにする。


シャーロットは
バスケットに
入るだけのパンを詰め込み
森の入り口までやって来た。


二年前に雨宿りをした
ブナの木の下に。


その日も
森の奥からは冷たい風が
シャーロットの頬を撫でる。


少し身震いをしてから
勇気を振り絞り
森の中へと歩を進めた。


一歩進むごとに
暗くなっていく森の中は
じとっとした湿度に包まれ
不気味な静けさを感じる。


それでも
シャーロットは
引き返そうとはしない。


後ろも振り返らずに
枯れ葉を踏み進んでいく。


数十分歩くと
先が明るくなっているのが見え
シャーロットはその光に向かって
走るが


大きなブナの木のところへ
戻って来てしまった。


ただ様子がおかしい
森に入る時は
天気も良かったのだが


戻ってきた時には
領地は霧で覆われ
辺りは何も見えなくなっていた。


「あれ?この木は?
入り口のブナの木よね……」


真っ直ぐ進んだはずなのに
同じ所に戻って来てしまう。


再び森へと入っていく。


「入り口に戻ってしまうってことは
魔女はいるって事よ!」


数十分歩くとまたしても
明かりが見える。

またしても
同じ所に出てきてしまう。


「お願い!魔女に会わせて下さい!
私は魔女に
会わなければならないの!」


そう願いを込めて
再び森の中へと足を進める。


今度は
ゆっくり一歩ずつ
足元を見て歩いていくと


枯れ葉や枯れ枝を踏む音が
静かな森の中に鳴り響くのが
シャーロットの緊張を
高めてしまう。


少しすると
森の中にも
霧が立ち込めるようになり
前が見えなくなっていく。


「どうしましょう?
全く前が見えないわ…」


シャーロットは
戻る事も出来たのだが
彼女の決意は固い。


大きい木の幹を手がかりに
少しずつ前へ前へと
足を進めていった。


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