プリンセスナイト-1
こんにちは。俺、若津冷吾(わかつれいご)。普通の高校一年生。自分で言うのもなんだがクラスのリーダー。そして、学年一位の学力の持ち主。全くつまらない。みんな俺の言うことを聞く。願ったことが全て叶う。あぁ、マジつまんねぇ。新鮮さがねぇよ。
「なぁ冷吾〜。」
「うん?どーした将大。」
桐雨将大(きりうしょうた)。俺の1番の理解者と同時に親友。コイツがいなけりゃぁ、学校来る意味なんてない。
「また菅谷がイジメられてるぞ?」
「あぁ、そーだな。」
「冷てーなー。」
「興味ナシ。全くナシ。眼中にナシ。」
「怖いわ〜。」
菅谷朝鳥(かんだにあすか)。 クラス中の嫌われ者。なんで嫌われてるのかは知らないが、つか興味ねぇけど、相当やられてるのは確か。
「世の中そんなもんだよ。部活行くぞ〜。」
「へいへーい。」
俺と将大は野球部に所属している。投手と捕手。まぁバッテリーってやつ。地区大会レベルの高校なんざ完封で抑えられる。
「あ。」
「ん〜?」
「スパイク忘れた。取りに行ってくるから、先に行ってて。」
「早くしろよぉ〜冷吾は足速いのに走らないからな〜。」
「分かった分かった。」
俺は教室に向かって歩いた。走らないのは体力を使いたくないから。部活に少々遅れても大丈夫。先輩達だけじゃ試合に勝てないことを知ってるから。誰も怒ったり叱ったりしねぇ。ったく、退屈だ。
そうこう考えている間に教室に着く。さっさと取って部活に行こう。今日はスライダーを完璧にしたいな。などと、考えながらドアを開けようとした時。
「っぐ…はぁ…うぅ…。」
泣き声が聞こえる。
なんだよ、居づらいな。と思いつつ一気にドアを開ける。
「……。」
泣き声の主は菅谷だった。泣きながら机の落書きを落としている。俺にわき目もふらずに。ったく、高校生にもなって落書きかよ。くだらねぇ。
俺は手早くスパイクを取り、教室から出ようとした。
「……きたの?」
急に声をかけられてちょっとビックリする俺。良く聞こえない。
「あ?」
「何しに来たの?」
「あぁ、スパイク取りに来ただけ。」
「……そう。私のコト馬鹿にしに来たのかなと思った。」
悲しそうな顔で言う菅谷。精神的に追い詰められてそうな考え方しやがる。