家族旅行での出来事 2-1
その頃、征爾は雅和からの返信がないことを少しばかり気にかけていた。
ラインの画面を何度開いても既読にならない。
征爾は不安になり、敏明にそのことを伝えた。
しかし、雅和たちの身に何かあったのではないかという危惧は、
敏明の一言で払拭された。
「ああ。真奈美たち、スマフォは家に置いていくんだって。
誰からの情報も入れずに、誰にも情報を流さずに、3人だけの判断で過ごすって、
雅和さんが言ってたらしいよ。」
(よりによって、伝えたいことがある時に限ってこういうことか。
まあ、急ぐことではないのかもしれない。親がすぐそばについているんだ。
わたしたちが気付くことぐらい、親が気付かないわけはない。)
征爾は、親としての雅和と香澄に期待した。
(心配しても仕方のないことを心配する必要はない。
こっちはこっちで、心を乱されずに、この場を生きていくことだ。)
征爾は未来の激しい腰遣いに、
すぐにでも絶頂を迎えそうなほどの快感を感じながらも、
経験値というプライドを守るため、
真奈美たち家族の行く末を心配することで、
辛うじて、未来の腰の動きと内部の蠢きがもたらす快感に必死で耐えていた。
麗子と紗理奈はカメラマンに徹している田辺の股間に何度も手を出し、
その度に田辺に拒まれていた。
「今はダメですよ。わたしはカメラマンなんだから。
征爾に、と言うよりも、未来や将来、それに明日香に叱られます。
なんでちゃんと撮影していなかったんだってね。」
それでも田辺は、紗理奈と麗子によって着ているものを少しずつ脱がされ、
今はほとんど全裸の状態で家族同士の交わりを撮影していた。
それで少しでも油断していると麗子の手が、そして紗理奈の口が、
田辺のペニスへと伸びてきた。
(オレも変に義理立てする必要もないんだけどな。
でも、こうやっていることで、
麗子も紗理奈も、どんどん性欲が高まっていくはずだ。
やがて溜まりに溜まった性欲を解放するために、
思いがけに大胆な行動に出るはず。
その時のための我慢と思えば大したことはないさ。)
田辺は淡々としたふりをしながら、
征爾一家と我が妻や息子、娘たちの狂宴のようすをカメラに収めていた。
真奈美たちの旅館へと話を戻そう。
真奈美が部屋に戻ると父親はご機嫌でビールを空けていた。
「あ、お帰り。どうだった?」
「うん。広瀬さん?だっけ?」
「うん。」
「二人一緒に入ってたよ。」
「な?」
雅和は香澄の方を自慢げに振り向いた。
あまりにも真奈美があっさりと言うので香澄は戸惑った。
「真奈美ちゃん、覗いたの?」
「だって、混浴だもん。真奈美が覗いても平気でしょ?」
「そっか。兄妹とは言っても、あの年齢で一緒に入るなんて、
よっぽど仲がいいのね。」
「うん。楽しそうだったよ。」
「ヤダ。真奈美ちゃんったら。どのくらい覗いてたのよ。」
「だって、声が聞こえたし。
覗くっているよりも、脱衣所からお風呂がよく見えたから。」
「そう。じゃあ、ふたりでゆっくりあったまっていたのね。」
「あのね、お兄ちゃんの方が揉んであげてた。」
「揉む?そうか、最近は若い人でも肩こりとかが多いらしいからな。」
「ええ。確かにそうよね。パソコンとかスマフォとか。
目の疲れが肩や頭に出るみたいよね。」
「でも、お兄ちゃんが揉んでたのはお姉ちゃんのオッパイだよ。」
「オッパイ?」
「うん。お姉ちゃんの方はお兄ちゃんのをしゃぶってたし。」
「真奈美ちゃん。あなた、一体何を見てきたの?」
「え〜?お姉ちゃんとお兄ちゃんが向かい合って湯船に入ってて。
で、時々、抱き合ってキスしたり。
で、お兄ちゃんがお姉ちゃんのオッパイを揉んだり舐めたりしてて。
そしたらお姉ちゃんが、アン、とか、ウフン、とか言い始めて。
で、お兄ちゃんが湯船の縁に腰かけたら、お姉ちゃんが湯船の中に入って、
お兄ちゃんのお股の間にお顔を入れて……。
で、ペニスをしばらく握ってて。そのうちにパクって。」
「そ、そんなこと、してたの?」
「うん。だから、真奈美、黙って覗いてたら悪いなと思ったから、声をかけてきた。」
「えっ?そのタイミングで?」
「えっ?だって、始めちゃったら声、かけられないじゃん。」
「た、確かに……。」
香澄は愕然とした。
兄妹で、混浴で、愛撫し合っている現場を見られ、声をかけられる……。
香澄はその瞬間の兄弟の顔を想像した。
「うん。でね。あとで真奈美たちと一緒に入ろうねって。」
「そ、そんなこと、言ったの?」
「うん。でね、約束してきたよ。夜のご飯食べ終わったら、一緒に入ろうねって。」
「あ、あの、お兄ちゃんが、そ、そう言ったの?」
「うん。お兄ちゃんとお姉ちゃん、少し相談してて。
でも、すぐに、いいよ、一緒に入ろうって。」
「そ、そうなの。」
香澄は雅和の飲みかけのビールをこぼしそうになった。
「うん。だから、早くご飯食べて、早く一緒に入ろ。」
「あ、なた。ど、どう、します?」
香澄は残ったビールを一気に飲み干した後、
雅和の方へ向き直って半ば怒りながら言った。
「どうって、お前。真奈美が、約束してきたんだったら……。」
「でも、そんなことをしている兄妹と一緒にお風呂の入るなんて……。」