一夜の夢-3
その中のひとりはそう言って私の手を握って離さない手を振り解いた。
だけどこの人はそのどっちでもない。
「いや、偶然にも会えるとは思わなかったよ。今度はひとり旅だけどあの旅館に泊まって何気なく君の事を聞いてみたら、もう辞めてしまったのだと聞いた」
「そう、私は本雇いじゃなかったのよ。たまたまお手伝いに行ってただけだったから」
途方もない夢の糸口に思いがけず出会った気持ちだった。
こうして会ってみると行き擦りにも体を寄せ合った仲のような、どこか砕けた気はするものの、結局は寄ってたかって強姦されたようなものなのだ。よくは憶えていなくても四人分の淫靡な体液が私の体の中に残された。
それが忘れられずにいる私はきっとおかしい。
今夜会えないか?と言われたけど、私はそのままやり過ごしてしまおうと思った。
これでも私にはふたりの子供がいて家庭もあるときっぱり言い放った。
ここにきて、あの時の夢はあの時だけでいいのだと思えてしまったのだ。何もなかった・・・それでいい。
それなのに少し飲んで帰ってきた主人が寝入ってしまうと私はいつも通りに残り湯をすませて、聞かされた電話番号に連絡をとってみた震える指先があった。
「もう休んでた?」
「いいや。そっちこそ、連絡くれると思わなかったよ」
「少しなら出られそうだけど」
どうこう言いながら私は勝手知った老舗旅館の薄暗い通用口から足音を忍ばせた。
後から思えばもう少し早い時間なら、誰かれかの従業員とすれ違ったかも知れない。
「あっ痛い・・・」
「痛かった?あの時はもっと強く噛んでと喘いでたじゃない」
「そんな・・・よく憶えてないのよ、あの事は」
歯形の犯人はこの人だったみたいだ。確かに私は乳首を強く刺激されると感じる方だけど噛みちぎられるかと思うほど強くされたら思わず悲鳴をあげてしまった。
これでまた、しばらく乳首が痛くなるのだろう。
その痛みとは他所にぬめりを帯びた二枚の花びらは指先で優しく撫でられて、時折に尖った花芯を弄ばれる。
腰に電気をあてられたようになりながらも、いつの間にパンティを引き剥がされてしまったのだろうと思ったりもする。
私も負けじと浴衣の中の硬くなったものに手を伸ばすと男は帯を解き、全裸の姿になってそれを私の口元に突き付けてきた。
それに見覚えがあるような気がした。四本もの男根で一度に犯された私にはどれがどんな風だったかなど憶えているように思えないけど、傘の部分が広くて不自然なほどに反り返ったそれを何となくではあるけど憶えているような気がした。
舌を絡めながら徐々にと喉の奥にまで咥え込むと久しくそれを口にしていない事を改めて思う。