仮想通貨-2
「一転、6番から10番までは、知らない名前が並んでるわ…」
チラッと柳川を見てすぐにリストに目を向けた。一瞬だが、柳川の顔に少し緊張が走ったように見えた。
その時、マギーの携帯が鳴る。
「ちょっと失礼します。」
お辞儀をして電話に出るマギー。
「はい、菜月です。…はい、はい…、はい。そうですか。分かりました。では打ち合わせ通りに。はい。失礼します。」
そう言って電話を切ると、再びリストに目を向ける。
「6番が北川辰彦さん。7番が霜山郁夫さん、8番が輪島和子さん。9番が井田哲也さん、10番が尾崎早苗さん…。この6番めからの方々は一般人ですか?」
「そうですね。ただし皆さん株をやっておられまして、投資には慣れてるみたいです。」
「そうですか。」
そして息を吸い、ゆっくりと吐き出したマギー。何か分かったのかなと言った顔で矢島と柳川はマギーに注目していた。
「おかしいですね。」
マギーの言葉にドキッとする2人。
「何がですか?」
「これは日付を見ると昨日の時点のビッツコイン保持者のランキングですよね?」
「はい。そうですが…」
柳川の顔が強張ったように見えた。
「実は私も昨日の時点でのビッツコイン所持者ランキングのリストを持ってるんですが…」
「え…!?」
矢島と、特に柳川は驚いた。
「ビッツコインを経営するプラネット社からいただいたものなので正確なランキングです。それがこちらです。」
マギーはバックの中からリストを広げる。
「ほぼ同じメンツです。ただし…」
リストを見る柳川の顔色がみるみるうちに青ざめて行くのが分かった。
「7番だけが違ってます。私が手に入れたリストては、園田洋子さんとなってます。」
「…」
柳川はリストの園田洋子の名前に目を向けたまま固まり、沈黙する。
「どうやら見覚えがある名前のようですね、柳川さん。」
柳川の額から汗が滲む。
「え?え?どう言う事ですか!?部長??」
柳川の顔を覗き込む矢島。柳川は動けない。マギーは極めて穏やかな口調で柳川に言う。
「柳川部長、園田洋子さんて…、ご存知ですよね?」
「…」
「あなたの義理の妹さんですものね…。」
矢島と華英は驚いた。柳川の額からリストに汗がポタッと落ちた。
「どうなんです?柳川さん?」
柳川は沈黙を続ける。
「言わないなら私が言いますわ?奥様の光代様の妹さんで、あなたの義理の妹。…であり、愛人…。」
「ええっ!?」
矢島と華英は飛び上がる程に驚いた。まさかそこまで調べられているとは思わなかった柳川の肩がガクンと落ちたように見えた。