鈴木家での出来事 1-2
「でも、あそこのサイズは父の方が一回り大きくて、
セックスもプロポーズも強引だったから、
その強引さに負けて、仕方なく征爾おじ様とは別れたって。」
「未来。そこまで言ったらお母様が恥ずかしいだろ。
それに奥様の前でそんな暴露話をされたら、
征爾おじ様だって立場がなくなるじゃないか。」
将来がフォローにならないフォローをしたが、征爾は笑っていた。
「いや、相変わらず二人ともストレートだね。
小さい頃とちっとも変ってない。」
征爾が笑いながら言った。
「いやいや、遠慮っていうものがなくって。
すみません。奥さん。お気を悪くされましたでしょ。」
明日香は初対面の麗子の機嫌を損ねたのではないかと心底心配しながら声をかけた。
しかし、麗子から返ってきた言葉は意外なものだった。
「いえいえ。うちの人のテクニックの方が、なんて未来さんはおっしゃいましたけど、
田辺さんのテクニックこそ、相当なものでしたもの。
わたしはたった一晩で、虜になりましたから。」
麗子はこの前でレイプで虜になった田辺のペニスとテクニックを思い出しながら、
全く臆することなく、田辺の妻、そして子どもたちの前で開け広げに話した。
あまりにも奔放な麗子の言葉に、明日香は正直言葉を失った。
唖然としている明日香の方にそっと手を置いた征爾が明日香の耳元で囁いた。
「まあ、つまりはそういうことだよ。明日香。」
征爾に直接、下の名前で呼ばれただけではなく、
いきなり耳元に息を吹きかけられた田辺の妻、明日香は真っ赤になってうつむいた。
「わたしたちは今更お互いの間で秘密にすることも隠し立てすることも必要ないんだ。
もちろん、本当の家族ではないし、親戚でもない。
まあ、この先、美奈子や敏明が将来君や未来さんと一緒にならないとも限らないから、
親戚になる可能性はあるがね。
血のつながりなどは全くないが、今日、二つの家族はより深い絆で結ばれる。
そう考えていいんだろ?田辺。」
「ああ。征爾。お前の言う通りだ。
オレたち家族は、今日から血のつながり以上の絆で結ばれる。
ただ……。」
「ただ……。なんだ?」
征爾は不安になって田辺に詰め寄った。
「ただ、オレ以外がどう考えるかは、それぞれ本人の自由意志だ。」
「なるほど。そういうことか。」
「ああ。ただ、今日、お前の家族たちと身体を交えることまでは伝えてある。
まあ、それを納得させるだけでもかなり時間はかかったがな。」
「一番こだわったのは、明日香じゃないのか?」
「さすがだな。征爾。その通りだ。
明日香は、淫乱の上に超が付くほどの淫乱の癖をして、
なぜかしらオレに対する貞操観念だけは強いんだ。
オレ以外の男、いや、男たちに抱かれるという話をしたら、逆上してな。
離婚話まで切り出したくらいだ。」
「なるほど。貞操観念の強い、貞淑な淫乱妻っていうわけだ。」
「せ、征爾さん。そんな言い方って、あんまりです。」
明日香は顔を真っ赤にして征爾に詰め寄った。
「明日香。何を勘違いしているんだ。これは最高の誉め言葉だよ。」
「誉め言葉?これが?」
「明日香さん。わたしもそう思うわ。」
麗子が明日香に向かって言った。
「貞操観念の強い、貞淑な淫乱妻……。
わたしは望んだけれど、なれなかった。
わたしは単なる淫乱妻。貞操観念のかけらもなければ、
貞淑さなんて全く持ち合わせてはいないわ。」
「そう言いながらもお母様にとっては、お父様が一番。そうじゃありません?」
紗理奈が母親の手を優しく握りながら言った。
「麗子。わたしは君のまま、君の全てを愛しているよ。
それは間違いないことだ。」
「ええ。わたしもそう思います。お父様は、他の女性に愛を注ぐことはあっても、
それは常に、その場その場の状況を考えた結果、最善の方法として、だと思うの。
最終的に、お父様が一番愛してらっしゃるのはお母様だわ。」
「そうね。わたしもそう思うわ。
ただ、それを聞いたら、香澄さんはさぞかしがっかりすると思うけれど……。」
「美奈子。それは違うわ。香澄さんもきっとわかってらっしゃるはずよ。
お父様にとっての一番は誰か、と言うことは。
それに、香澄さんにとっての一番は、雅和さん、旦那様ですもの。」
紗理奈の言葉に麗子も美奈子も、そして敏明や征爾も大きく頷いた。
「征爾。お前の家族の結論が出たみたいだな。」
「ああ。と言うよりも、お前たちのことを話した時点で、
うちの家族の気持ちは一致していた。
幸い、オレたち家族は一枚岩だ。
新しい相手が現れるたびに、自分たちの存在意義を確認してきていたからな。」
で。田辺。お前の話の途中だった。」
「ああ、そうだったな。え〜と……。
オレ以外がどう考えるかは、それぞれ本人の自由意志だってことだったな。」
「田辺以外……。
つまり、明日香も含めて、将来君、未来さんがそれぞれが、
わたしたち家族をどう思うかと言うことだな。」
「ああ。父親だからと言って、オレの考えを押し付けるようなことは、オレはしない。
明日香がどう受け止めるか、将来がどう思うか、未来がどうしたいか。
家族だからと言って、答えが一つである必要はないと思っている。」