投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

【学園物 恋愛小説】

想の最初へ 想 12 想 14 想の最後へ

想[5.5]-1

「あの子、名前何?」
「あれ?安達 主里。オレ同じクラス!」
「ふーん、E組?」
「うん」


同じバスケ部の奴がそう教えてくれた。
安達 主里。珍しい名前。人の名前覚えるの苦手だけど、まあ忘れないだろうな。つぅか、忘れたくない。なぜか?
それは…。
「名屋君っ、頑張れぇーっ!」
あの子の声だけが妙に聞こえてくるから。俺が部活で練習をしていると、体育館の入り口に集まる女子。その中にあの子はいつもいる。
練習見てそんな楽しいか?試合じゃあるまいし。
スリーポイントの練習をしていると、その集まりはギャーギャー騒ぐ。
「ナイッシュー!」
「かっこいいーっ!」
入って当たり前だっつうの。
そんな時、あの子はパチパチ手を叩くだけだった。他の子と違ってギャーギャー騒がず、俺がシュートを決めると自分の事のように嬉しそうな顔をした。


そんな奴だった。練習試合で俺がシュートすればあの子は「ナイスーッ」と口元に手を当てて笑い、ボールを奪われれば「ドンマイッ」と今にも泣きそうな表情をした。あの子の応援は他の子と違い、何か特別だった。俺が一番聞きたいことをあの子は言ってくれた。あの子の声だけは、何故かハッキリ聞き分けることが出来た。
やっぱ嬉しいじゃん。欲しい言葉貰えると。無駄に「かっこいい」だの「ナイス」だの言われるより何倍も心に届く。


俺は、毎日の部活が楽しみで仕方なくなっていた。主里がいない日は何か寂しい。声が聞こえればテンション上がって俄然やる気が出る。
単純なんだよ、男ってモンは。


部活を引退する日が来た。何だこの気持ち…。もう、声が聞けないと思うと寂しい。辛い。あの子と接点が無くなってしまう。
けど、まあ仕方ねぇよな。同じ学年だし、会えなくなる訳じゃない。
それに俺には優衣がいる。付き合ったばかりの…。これから好きになる予定。あの子は、主里は、単なる同級生だよな…。


だけど、どうもおかしい。部活を引退して数か月。単なる同級生だと思っていたのに、いつも主里のことを考えている自分がいる。授業中も、友達といる時も、しまいには優衣といる時まで…。
今日はいるだろうか。体育祭、あの子は見てくれているのだろうか。
バレーの決勝戦。
もし、もしあの子が俺を見ててくれているなら負けたくない。

「名屋君ーっ!」

はっきりと聞こえた。間違いない、主里だ。
相手からのサーブ。飛んできたボールを松田が取る。しかし、ボールはバウンドし高く上がった。俺は追い掛ける。
絶対取ってやる!
だけど、ボールは群衆の中に消えていった。
くっそ…。
俺は俯き、流れる汗をリストバンドで拭った。ゆっくり頭を上げる。その時、見つけた。俺を驚いた表情で見上げている女の子を。
…主里、こんな近くにいたのか。
俺の心臓は跳ね上がった。疲れも吹っ飛ぶ。
俺はみんなのところに戻った。
君が見ていてくれるなら、君の声が聞こえるなら、俺はどこまでも頑張れる。
君の笑顔が見たいから、君の声が聴きたいから…。


想の最初へ 想 12 想 14 想の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前