ゴールデンウィーク-1
今年のゴールデンウィークは、曜日の並びおかしく、前半に3連休、2日平日があって、後半に4連休となっている。
前半の3連休は、裕哉も休みになるので、一緒に金沢に旅行に行くことにした。
そして、後半の4連休は、実家に戻る。
親に借金をしているので、さすがに顔を見せない訳にもいかない。
ただ、無駄遣いをしている訳ではないので、毎月、順調に、返済はしている。
そして、裕哉が泊まりに来たり、裕哉のマンションに行く時は、裕哉は必ず麻衣に1万円札を渡す。
『これで食材とか買っておいて。』
そう言って、毎回、お金を置いていく。
その上、裕哉とのデートの時、裕哉は一切、麻衣にはお金を出させない。
だから、安い給料ではあるが、親への借金返済どころか、貯金もけっこう出来ている。
ゴールデンウィークの初日、麻衣は米原から京都へ移動する。
京都で裕哉と待ちあわせて、特急サンダーバードに乗り、金沢に向かう。
車内では駅で買った駅弁を食べ、あっという間に金沢に到着する。
駅構内には、北陸新幹線をアピールする看板が、目に付く。
京都から金沢まで2時間ちょっと。
まずは、金沢駅前にあるホテルにチェックインする。
兼六園や東茶屋など、観光地を見て周り、あっという間に、2泊3日の旅行は終わった。
米原に戻り、4日間勤務して、今度は新幹線で、東京へ向かう。
実家では、麻衣は大人しく過ごす予定だったが、詩織からラインが入ってきた。
『アリス先生、今、相模原で教室開いてるよ。』
すぐに麻衣はアリス先生にラインを送った。
『島岡さん、東京にいるのね?相模原なら近いわね。』
と、アリス先生から返信が来る。
『でもね、見学コースも体験コースも、全部、予約でいっぱいなの。ごめんなさい。』
と、続く。
『そうですか、残念です。 またの機会にお願いします。』
『島岡さん、いつまで東京にいらっしゃるの?』
『明後日までです。それで、明々後日に米原に戻ります。』
しばらくして、アリス先生からラインが来る。
『私、明日は完全オフの日なのね。それで島岡さんが良ければ、ランチでも一緒にどう?』
麻衣は、
『はい、ぜひご一緒したいです。』
と送る。
翌日、麻衣は八王子駅で、アリス先生と待ち合わせをした。
12時30分、駅で合流して、歩いて近くのホテルの1階にあるレストランに入った。
レストランには、個室もあって、そこに案内される。
お手軽なフランス料理のランチを食べながら、アリスが聞いてくる。
『島岡さんは、どうして緊縛に興味を持ったの?』
麻衣は迷ったものの、彼氏を裏切り、溝田に拘束されて無理矢理セックスをした快感が忘れられないことを話した。
アリスは黙って聞いていた。
『彼氏は、良い人ね。何も聞かず、未来に向かって一緒に、と言ってくれたんでしょ?』
『はい。』
『でも、性欲は、別物ってことよね?』
『そうですね。』
『教室に来る人は、多かれ少なかれ、何らかの事情を抱えている人が多いと思うわ。』
と、アリス。
『アリス先生は、どうして緊縛師になったんですか?』
と、麻衣が聞く。
少し迷った後、
『島岡さんも正直に話してくれたから、私も正直に言うね。』
と、切り出す。