テキスト・ブック-2
まわりのやつは人生楽しそうだが、僕はそんなことはなかった、くだらない日常などあきあきしていた。あれはそんな僕自身の声か?
オマエハワタシノカタワレダカラ
いったい、なんのことなのか…
なにはともあれ、目を覚ませば、イタリアである。
「あ〜!気持ちいい。やっぱり日本とは空気が違うね」
「そうかな」
そのとうりである。西欧はその地形もあってか、空気にわざわざ水分を含もうなどと陰気な性格はなく、ふけどふけどなんと爽やかなのかと感心する。日本の喧騒や暑苦しい日常などは遠い過去のようだった。
実はサヤのセリフは僕もよく口にしていた。なんだか恥ずかしかったので、そしらぬふりをした。
「さぁ、行こうか」
やはり何年か訪れてないと、土地は変わる。先に来た時はシャンパーニュ広場にこんな大型スクリーンはなかった。
「すごいね、やっぱあれでサッカーとか見るんだろうね。いいなぁ。」
「そうだな…ほら、あそこ見てみろよ今夜6時からラッティとグローリーマルコムの試合があるみたいだぜ。」
「じゃぁ今夜はサッカー観戦と洒落こみますか」
「なんだよそれ。まぁそうしようか、イタリア人は激しいぞ」
というわけで予定は決まった。もちろんわざわざイタリアまでサッカーを見に来たわけじゃない。
ホテルのチェックインを済ませたら当然観光、王道である。
いろんな所をみて回った。コロセウムやらオリップ神殿やらセントソフィア大聖堂。もちろん僕は何度も来たのでよく知っていた。でもサヤはとても喜んでいた。
それでも美術館は勝手が違う。やはり一流の美術品は何度みても感動する。なぜか胸が高鳴る。
そういう意味で僕には特別だった、この、ルーブル美術館は。
「このマケラッティの絵はすごくてだな」
「え〜そんな説明いいよ〜」
これがいけなかった。ついつい熱が入ってしまい、三つ目の絵でサヤはいなくなっていた。
「あれ?さや?さやー」
どこにいってしまったのだろうか、それにしてもいかがわしい展示品もあるな、エクスカリバーの刺さっていた岩?あほか。
サヤは美術館の手前の大図書館にいた。なにかもめている。