自信とプライド-1
「今回は我々警察の中で言い訳の出来ないような不祥事を起こしてしまい、誠に申し訳げざいませんでした。」
清水と沼田による麻薬流出事件の記者会見を、深々と頭を下げてそう締めくくった若菜。大勢の記者らマスコミが集まり、若菜に激しくフラッシュが照りつけた。
警察の不祥事を責め立てる質問が若菜に浴びせられる。あまりにも多くの質問、叱責が飛びすぎて全く聞き取れない程だ。そんな会見をマギーらは千城県警で放送を見ていた。
「上原さんが悪いわけじゃないのに…。」
哀しそうな目で見つめる華英。麻薬がらみの事件を一番憎んでいるのは若菜だと分かっているだけに悔しくて仕方ない。
「これがトップにいる人間の責任なのよ…」
マギーは諭すような声で言った。
そしてある言葉が会場に響いた瞬間、会場のみならず放送を見ている人間全てが息を飲んだ。
「総監の進退についてはどうなんでしょうか?」
その一言に若菜の表情はキッと引き締まる。今や圧倒的な支持を誇る警視総監、上原若菜。内閣支持率よりも遥かに上を行く若菜の支持率だ。そんな若菜に対しての質問に全員が注目した。
「言い逃れが出来ないこの不祥事。当然警視総監である私には必ずその責任はあります。辞めるのも責任を取る事。こんな不祥事を二度と起こさぬよう身を粉にして尽力し結果を出すのも責任の取り方。素直な気持ちを言います。それが皆様の理解を得られるかどうかは別にして。私は逃げたくありません。私は皆様に納得をいただける努力を出来ると信じてます。私が警視総監でいた方が、絶対に世の中を、日本を平和な国に導けると信じてます。私は犯罪にまだまだ立ち向かいたい。苦しむ人達を救い続けたい。そう願っております。もし成果が出ず…いや、成果は出します。必ず…。」
強い視線でその記者に向かって答えた若菜に、記者は浮かした腰をゆっくりと椅子につけた。
会見は終わった。
「上原さん、カッコいい…」
華英が惚れ惚れしながらそう呟いた。
「確かに…」
マギーは誰かに聞かれたら悔しいなといった小さな声でそう呟いた。警視総監はこの人しかいない、そう思わせてくれる会見であった。
「我らのボスは頼もしいな!」
石山がマギーと華英の肩をポンポンと叩いたのであった。