自信とプライド-11
「あの日の周辺の監視カメラの映像はこちらで検証しましたが、特に変わった様子はなかったと聞いてます。栗田さんは被害者である佐川明子元市長と面識は?」
栗田は表情を引き締めた。
「あります。開発関係の仕事で何度か会いました。ただそんなに親しい訳ではなく、会うとあちらが名前は覚えてないが顔は知ってるみたいな対応で仕事の話だけしていたような感じです。」
「プライベートでは会った事はないと?」
「ないですね。仕事上の飲食も含めてないです。」
「そうですか。何かに誘われた事は?」
「ないない!もっと上の人間にならあるんでしょうが、課長クラスには見向きもしないんで、あのお方は。」
確かに強欲な女である。多大なメリットがない相手には、市役所の所員を全部味方につけようと言うようか大義でもなければ並の人間には見向きもしないのは調べで分かっていた。
「そうですか。では上の方と佐川元市長が忖度していたような気配はありましたか?」
「いやー、ないですね。市から援助して貰った事など一度もないんで。だいたいあちらがこちらに来てたのは駅全体をビッツコイン支払いや決済が出来るよう要求していただけなんで。その為の予算は組むと言ってましたが、それは別に不正でも何でもないとは思いますが。」
「そうですね。問題ないですね。彼女は何故ビッツコインに拘るんでしょうね?」
「さぁ。まぁ自分の得になるからじゃないですかね。あの人はビッツコインで相当儲けてたようなんで。ま、聞いた話ですが。」
「ナルホド。分かりました。常磐銀行にも話を聞いた方がいいかもなぁ…。お時間とらせてしまい申し訳ございませんでした。」
華英が驚く程あっさり引き下がったマギー。玄関で栗田に見送られながらJR城南を後にした。
「随分あっさりと引き下がったんだね。」
マギーはサラッと言う。
「だって、アイツ、嘘ついてるもん。あの場で追及するより泳がせておいた方が、黒幕もあの手この手で私達を妨害してくるはず。動かないなら、動かさないとね。これで今度は常磐銀行にも何かしら策を練ってくるはず。あの手この手で妨害してくるなら、その手を引っ張るまでよ。さぁ、どう動いて来るかな…♪」
マギーは華英にウィンクした。
「あいつらも全裸で張り付けにしなきゃダメか?邪魔くさいからな…」
やはりビル5階から2人を見つめる男がいる。
「まぁ全裸にして張り付けたとこで、ビッツコインを佐川明子から奪う事は出来ないわ?全裸張り付けはパフォーマンスだけで何のメリットもない。無駄な事はもうやらない。」
女の言葉に頷く男であった。
「それはそうと、ビッツコイン絡みを詳しく捜査されると面倒な事になりそうね。手を打っとかないとあの方に迷惑がかかるからね…」
腕組みをしてマギーと華英の後ろ姿を見る女の姿があった。