秘書の告発-2
黒川は、
『はい、あの検事の事は調べて有ります。』
『今、何処に行くにも警察の警護が付きます。』
『また自宅マンションも警官が詰めています。』
『あの検事を外部の人間に狙わせるやり方は無理でしよう。』
『近づける者に狙わせる。』
『例えば、恨みを持つ者に。』
『1人息子がいるので、その息子を狙う。』
『息子に重大な事が起きれば裁判どころでは無いでしょう。』
と提案する。源蔵は、
『あのアバズレの周りにそんな鉄砲玉がいるのか?』
と疑わし気に聞く。黒川は、
『作るのです。』
『作れる男を知っています。』
と言い電話する。源蔵に、
『会長に会って貰いたく、呼んで有ります。』
と言う。程無く部屋がノックされ源蔵が返事すると黒い服装の男が1人入って来た。170cm位の痩せ型で髪も顎ひげも真っ白だった。黒川が頷き合図するとその男は、
『催眠術師の零です。』
と言う。源蔵は訝しげに、
『催眠術だあ、黒川寝ぼけてんのか!』
と怒鳴る。黒川は笑いながら、
『まあ、見てて下さい。』
『会長、誰か呼んで下さい。』
と言うと源蔵は面倒くさそうに、呼び鈴を鳴らす。程無く、部屋をノックしてくる。源蔵が返事すると、20代半ばのお手伝いの女性が入ってくる。黒川は、
『彼女に掛けても良いですか?』
と源蔵に聞く。源蔵は手を振り促す。黒川が零を見ると、
『人の普段は抑制されている願望を解き放ちます。』
と零が言い、女性に近づく。黒川が女性に、
『すぐに終ります。協力して下さい。』
と伝える。女性が怖がりながら頷く。零が近づき、ペンダントを取り出し振り子の様に振り女性に見る様に言う。2分位して指を鳴らして、
『あなたのやりたい事を。』
と囁く様に言う。女性はボォッとした様になり源蔵に近づくといきなり、源蔵の前に有るトレーの食事用ナイフを掴んで源蔵に振り下ろそうとする。
黒川がその手を掴み阻止する、零が指を鳴らすと女性は戸惑っている。零は女性に近づきペンダントをまた振り子の様に振る、
『全てを忘れて。』
と囁く。女性は急に周りを不安そうに見ている。源蔵が、
『行って良いぞ。』
と言うと源蔵に会釈して部屋を出た。黒川は、
『彼女、会長を殺したい願望が有りますね。』
と源蔵に話し掛ける。源蔵は、
『そうだろうな、この前レイプした。』
『金で黙らした、旦那入院中で金要るんだと。』
と事も無げに話す。そして零を見て、
『使えるな。』
と言い、ベッドのサイドテーブルから札束を投げて寄越す。
『手付けだ。』
と言う。黒川が頷くと零は札束を取り上げ、部屋を出て行く。源蔵の携帯から電話の着信音が聞こえてくる。源蔵が話し始める、
『はい、大原です。』
『えっ!』
『そうですか。』
『こちらでも、善後策を検討してみます。』
と言うと忌々しげに携帯を見つめ投げようとして止める。黒川を見て、
『山海の間抜け、秘書に裏切られたそうだ。』
『奴の裁判の検察側証人に申請されたとよ。』
『さっさと始末しないからだろ。』
と言う。黒川が、
『困りましたね。』
『山海先生の裁判が傾けば、会長の裁判にも影響します。』
と唸る。源蔵が、
『何とかしろ!』
と怒鳴る。黒川が、
『早速、零を使いますか?』
と聞く。源蔵が、
『山海、始末するのか?』
と聞くと黒川が頷き、
『死んでくれればベストですが。』
『入院しても山海先生の裁判は延期になり時間が稼げます。』
『それに山海先生は全く人望が有りません。』
『零のターゲットが山海先生の周りに山程います。』
と説明する。源蔵は笑いながら、
『俺と同じじゃねえか。』
『山海やれ!』
『殺しても良い!』
と言うと黒川はお辞儀をして部屋を出て行く。