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IFP
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IFP―第二章―-1

―shinsuke side―
(…………………あ〜ぁ、やっちまった。やっぱり俺にはこんなこと無理だったんかな?……………そんな顔で俺を見るなよ。圭、お前が悪いわけじゃないんだからさ。俺が油断しただけなんだよ。)
体はひき逃げされたにもかかわらず、痛みが感じられない。どうやらもう俺は駄目らしい。目線の先には俺と同じように車にひかれた無惨なコンビニの袋が見える。
「…いけ………い、…けい。」
圭のほうへ手を伸ばそうとするがうまくいかない。
「ぃ………け……ぃ……………」
それでもどんどん小さくなっていく情けない声を出しながら呼び続ける。すると一瞬はっとしたような顔になり、圭は俺のそばにきた。
「…た…の……む、……ロス……の………ねを…………………………ま…………って……く…れ……………………琴…音…………ま………たぜ、…………………ぉ……は…………だか……ら…………………………り……」
「仕事の邪魔です。早く退いて下さい。」
いきなり俺と圭の間に割込んできた男が、俺の口に何か突っ込んだ。「それじゃあ、運んで。」よくその男を観察すると救急士じゃないか。霞んだ目で観察もくそもないけど。
「おい待てよ。俺も一緒に乗せてくれ。」
物凄く不機嫌かつどこか情けない顔の圭があわてて救急士の襟を掴みかかりながら言う。
(口の中何入れたんだろう?)
俺の思考回路はすでにきれかかっているからか、呑気にどーでもいい口の中身を考えている。けっこう………つーか、かなり気になる(汗)
耳なりがガンガン鳴り、霞んでいた目さえもうあんまり見えなくなってきたようだ。
「仕事……の邪魔で……早………て下さ………、……………す。」遠くで誰かがしゃべっているのだろうか?耳なりが煩い。あぁ〜、なんかどうでもよくなってきた。いやいや、いかんよ!!!俺今死に際ですよ!?!?しっかりしろ自分!!!!あの救急士はやばい。脳が警告を発している。多分奴のら羽根だ。早く圭を連れて逃げねば…立て!!俺の足!!!!





“手を貸してやろうか?”





思考回路停止寸前の脳に響く声。…あぁ、そうだ、簡単なことだった。
(俺に力をくれ、報酬は………………俺の脳だ。)





“………承知した。”





―kei side―
「俺はそいつの連れだ、野次馬なんかじゃない。付き添いをするから早く病院に行ってくれよ!!」
「仕事の邪魔です。早く退いて下さい。」
「さっきからそれしか言わねぇじゃないかよ。早く病院に連れてって治療してくれよ!!!!!!」
俺は泣き叫びながら救急士の胸ぐらを更に強く揺さぶる。
「仕事の邪魔です。早く退いて下さい。」
どんなに揺さぶられても全く変わらない声のトーン。変わらない無表情。まるで機械仕掛けの人形と話している錯覚に陥った。背中に冷や汗が流れた。本能が離れろと囁く。
「仕事の邪魔です。早く退いて下さい。」
(…………………………薄気味悪い。いや、恐い。この場から離れたい、でも慎介をすぐにでも病院につれていかなければ、慎介は…………し…ぬ?)
…ドクン…………
「仕事の邪魔です。早く退いて下さい。」
ドクン、ドクン、ドクン、ドクン…
鼓動が大きく俺の頭に響く。
「………もういい。俺が連れて行く。」
ドクン、ドクン、ドクン、ドクン、ドクン、ドクン…
こんな気色悪いヤツを相手にしたのが間違いだ。落ち着け俺!!
煩い鼓動を無視し、救急士を乱暴にどかし、慎介を抱き上げ、強引に救急車に乗り込…………………………もうとした。


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