お-2
「正真正銘、ココに住んでる」
「・・・」
「ココから会社に行って、ココに帰って来て、ココ以外の家はない」
「奥さんは?」
「ココには一人で住んでる」
「別居?」
武藤が別居したなんて話は聞いた事がないけど
それでも昔からプライベートをペラペラ話す奴じゃない。
「あのさ?」
「うん」
「俺、アメリカに転勤してたじゃん?」
「うん」
「その間に離婚したって誰かに聞いてない?」
「えっ!」
離婚?
「奥さん・・・いや、元奥さん、向こうの生活に耐えられなくてさ」
「・・・」
「日本に帰っていいよって別居を提案したけど、籍を抜きたいって言われた」
離婚?
「子供もいなかったしな。向こうのコミュニティーに馴染めなくて」
離婚?
「知らなかった・・・」
「だろーなっ!」
離婚・・・
「お前さ?俺が結婚してるのに、お前に手を出そうとしてると思ったんだ?」
「うん・・・」
「そりゃ、逃げるわな」
「・・・」
「おれ、独身だよ。バツイチだけど」
そう言って笑いながら両手を広げた。
「早く言ってよ」
そういいながら私はその腕の中に飛び込んだ。