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透明な炎
【女性向け 官能小説】

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江の島水族館のクラゲはものすごくきれいに浮遊していて
見ているだけでゆらゆらしてくる。

「キレイ」
「あぁ」

手と手がくっつきそうなほど近くによって
まっすぐに立っているはずなのに気持ちが武藤の方に傾く。

真っ青にライティングされている大きな水槽の前に立って
自分自身も海の中にいるようで
冷たい空調が海の中にいるような錯覚を起こす。

「あぁ、溶け込みたい」
「俺も」

明日になれば日常が帰って来て
こんなにゆったりする時間もなくて
日本語を話す量と同じぐらい英語を話して
目の前のメールの内容だけがこの世のすべてのように格闘して
そして疲れて
帰りに少しだけ飲んで、愚痴を言って笑って
泥のように眠る。

こんなフワフワした時間なんかなくて
身体も心も全て溶けるような感覚に全てをゆだねたくなる。

そっと繋がれたその手の感覚にビックリして
武藤の顔をビクッとしてみれば
視線は水槽に向いたままで
繋いでいないもう片方の手をそっと自分の口に持って行って
「しぃ」
と私を黙らせる。

手ぐらいでじたばたするのも
この年になって恥ずかしくて
何よりその手の感覚が心地よくて

私は一瞬武藤が既婚者なことを忘れる事にした。


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