女らしく【08】『新入りとライバルと会議』-6
……ふぅ、行ったぞ。
「助かった…ありがとうマコト!」
どういたしまして。じゃあ帰れ!
「何だよ。少し話でもしようぜ?」
オレはテメェのせいで至福の一時を邪魔されたんだ!しかも二回目!
「そういや、俺が何で祟ってたとか聞かないのか?」
別に…過去に何かあったからだろう?それをオレが聞いてもどうしようもないし。
「そうか…
それにしても右半分だけ飾り気ねぇなぁ」
左半分の奏のスペースには、海外の恋愛小説やらぬいぐるみやら、可愛らしいものがたくさん置かれている。
反対に右半分…つまりオレのスペースにあるものは、少年漫画が大半…
「うるせぇ!オレの勝手だろうが、この………稲荷寿司!」
不意に思い付いた渾名。
その言葉に稲荷の顔色が変わった。
「あっ…悪い」
傷つけちまったか…
「いや…大丈夫。ちょっとびっくりしただけ」
本当か?悪かったな。何か稲荷はいろいろと複雑な事情がありそうだ……
あっ!そうだ。
「なぁ、大和はどうしてる?」
「…知るか」
大和の名前を聞き、かなりぶっきらぼうに答える。
大和も稲荷もお互いの何が気に食わないんだろ?
「まあ…博士にはオレから言っといてやるよ。
じゃあオレは大和を看てくるから」
そう言って部屋から出たとき…
「…そんなにアイツが好きなのか?」
突然、稲荷から問われた。
「ああ!大好きだよ♪じぁな!」
オレはその問いに自信を持って答え、パタパタと手を振り大和の部屋へと向かう。
稲荷は何か気の合う男友達って感じだな…
「あっ、そうだ、詩乃に気をつけろよ。犬耳の。
お前を括り殺すって意気込んでたから」
ふと思い出し、振り返る。
「簡単には殺られねぇよ♪左腕悪かったな…」
「別に大丈夫だよ♪」
案外、いい奴かもな…
笑う稲荷を後にする。