明-6
武藤の予約してくれたランチコースはすごくおいしくて。
たぶん、前菜がサーモンでも私はそのサーモンを気心の知れた武藤に丸投げして。
それでも、たぶん何も言わずに
「こんな美味いもん食べられなくて可哀そうになぁ」と
笑って私の分まで食べてくれちゃうんだろう。
でも、武藤はちゃんと予約する時にメニューを気にしてくれて
私の苦手なサーモンをチェンジしてくれた。
まずいよ?
まずいと思う!
あんまり恋愛経験がない私は
こんなちょっとの事でも嬉しくなっちゃう。
そして、これを次の彼氏にも求めちゃったらヤバいんじゃない?
こんなことしてくれる独身男なんかそうそういないよ?
こんなこと出来ないから独身なんじゃないの?
「武藤!」
「なに?」
「あんたとこれ以上休日を過ごしたら、私ヤバいんですけど!」
「はぁ?」
意味がわかんねぇ。とばかりに鼻で笑われて
私がトイレに席を立っている間にお会計まで済ませてくれた。
これって・・・
「ヤバいんだって!」
「だから、何がだよ!」