フィル-1
「レイファル国第一王女・フィルディアナ様に相違ございませんか?」
刻は真夜中、この広い城の中でも、眠りについていない者は警備の人間だけであろうという時間に、私の寝室には何者かの姿があった。
『相違ない。このような刻に何用だ?』
「正直に申し上げましょう。私はこの国を、貴女様の父親である現国王の悪政から解放しようとしている者です。」
興味深い話だ。私にそのような正体をさらせば私が人を呼び、己は捕えられるとは考えていないのだろうか。もしくは、私がそうしない事を知っているのか…。
『隣国では、イスラムの教えを受けた者達が武器を取り、日々血で血を洗う抗争を繰り返していると聞く。そなたも同じような族か。民を苦しめる、憎き独裁者である私の父親への抱腹に私の命を奪いに来たか?』
私が問掛けた男は背が高く、この国にはめずらしい東洋人の顔をしていた。
端正な顔立ち、切長の目は知性をかんじさせる。
「はっはははは……!本当に変わり者の王女だな。」
先程までの丁寧な言葉遣いは消え、男は高笑いと共に本来の自分をさらけ出した。
感じられた知性は薄れ、意地の悪そうな笑みを浮かべた口元は少しの粗暴さを見せていた。
「確かに、俺達も武器を用いてこの国を独裁から解放する。だが、宗教的思想は持ち合わせていない。それに俺はお前の命を奪うつもりも無い。とても独裁者の娘とは思えぬという変わり者の王女を、この目で見てみたくてな。」
『ほう?面白い奴だ。実際に見て、何かわかったか?』
私は男を嘲笑うかの様に言った。
「お前という1人の女に、とても興味を惹かれたね。」
『フッ、私が1人の女として見られるのは何年振りの事だろうな。父親が、武器商人からこの国の政を牛耳る宰相になり、私はただの女としては扱われなくなった。そして父がこの国を手中に納め、今では王女だ。そんな事、ちっとも望んでなかったと言うのに。そなたは奪わぬと言ったが、もうこの命に未練はないのだよ。民達の気持ちが私の命で晴れるのなら、私はそれで構わないと思っている。』
見ず知らずの男に、私は何を語っているのだろう…そんな想いと共に、この男なら私の気持ちをわかってくれるのではないか…という想いがあった。
「もうこの世の総てを悟ったかのような口ぶりだな。その歳で人生を捨てるとは何とも悲しい事だ。」
『本当に悲しきは、あのような父を持ってこの世に生を受けた事。そうでなければ、私も歳の近い娘達と同じ様に生きただろう。夢を持ち、恋をし、そして心奪われた男と結ばれる。だが、私にそのような事は叶わん。』
その言葉を聞き、窓辺にいた男が私の元へと歩み寄った。
「恋をしたければすればいい。まだ男も知らない青臭いガキが、簡単に人生を捨てるな!」
そう吐き捨てると、男は強引に私の唇を奪った。そして舌が私の唇を割り、舌を侵入させる。
『んんっ!んんん!』
私は突然の事に戸惑い抵抗を見せるが、それに男が従う事はない。
荒々しく私の服を取り去り、私の腕を頭の上で一まとめにすると、私の肌に舌を這わせる。
『………あっ!』
その舌が私の胸の膨らみの頂点に到達すると、私はその快感に荒がう事が出来なくなった。これまでに感じた事がない程胸が高鳴り、体が熱を帯び、そして男を求めた。
男の舌は次第に下へと下がり、その舌が私の淫核を捕えた時、私は男の存在とその行動を受け入れた。
『あっ、はぁっ、体が……おかしい。』
「これが女の快楽だ。わかるか?」
私は首を縦に振った。
『続け…ないのか??』
「お前がそれを望むのなら。」
『何故だかはわからない、だが私はそなたが欲しい。』
男はその言葉と同時に指を挿入させた。
潤いを帯ていたそこは、男の指をすんなりと受け入れ、与えられる快感を貧欲に貪った。
『あっ、あんっ!ひゃぁっ!』
私は瞳を閉じ、男に体を預けた。
「経験した事のない痛みと快楽に身を委ねる覚悟はあるか?」
私は再び頷いた。
それを見た男は服を脱ぎ捨て、私に覆いかぶさるようにして肌を合わせてきた。