アヤノ-16
その日の夜、俺と彼女の生活の終わりを知った栄祐が訪ねてきた。………大量の缶ビールとツマミを手に。
「俺、2人はずっと一緒に住むんだと思ってましたよ。」
そう言いなが缶ビールを開ける。
「バァカ!俺は13も歳上だったんだ、恋人になる前に父親になっちまうよ。」
「もしかして……“パパァ”とか呼ばせてませんよね??」
俺はそんな栄祐の挑発が嬉しかった。きっと、奴なりに気を使っているのだろう。
「それはお前の趣味じゃないのか??」
「違いますって!!少女趣味はないっすから!」
綾乃を部屋に返した後、俺は直ぐに川上 修の元へと向かった。
手紙を受け取った彼はただただ涙し、俺に礼を言った。
もうこの2人は大丈夫だろう。自分の未来をしっかりと見据えたのだから。
いよいよ俺の役目も終わった。そう思うと、不意に目頭が熱くなった。
「恭吾さん。」
そんな俺をみた栄祐に声をかけられた。
「なんだ??鬼の目にも涙とでも言うんだろ?!」
「そんなにツラいなら、俺が慰めてあげましょうか?!」
栄祐の奴が、真顔でとんでもない事を言った。
「遠慮しとくよ…。俺…女の子の方が好きだし…、ケツ掘るのも、掘られるのも嫌だからよ…。」
「フッ、俺だってそうですよ!まぁ、今夜は飲みましょ〜!!」
―栄祐…、ケツは掘らないが、お前は俺にとって必要な存在だよ。励ましてくれてサンキュー。―
「よし!飲むか!!」
「あ、でも飲みすぎないで下さいよ?恭吾さん、明日から仕事復帰なんですから。」
「うるせぇなぁ、お前は俺の古女房みたいだ…。」
まぁ、こんな幕切れも有りだろう。
「じゃぁ、恭吾さんに彼女が出来るまで、俺が女房役やったげますよ!」
「そんな励ましはいらねぇよ!」
くだらない会話と煙草とビール、夜はどんどん更けていく。
俺には…、恋人と過ごす甘い夜より、こっちの方が合ってそうだ。