艶之進、唸る肉刀-3
ここで用人、綾乃へ目を転ずる。彼女は床の間を背に、大きな座布団に身を沈め、舶来の珍しき赤い酒(葡萄酒か?)をギヤマンの器で飲んでいた。その濡れた紅き唇が「早うせい」と促したので、腰元たちに指示を出してひざまずかせ、男どもの一物へ手を添えさせた。
用人の扇子(決勝戦用で金箔貼り)を持った手が上がり、
「それでは、飛ばしくらべ、始めい!」
扇一閃。
凜はサッと艶之進のものをさすり始めた。満も小夜之丞へ同じ施しをする。
艶之進の一物は、本日、さんざっぱら吐精したので、はじめのうちは弛緩したままだった。一方、小夜之丞は徐々に勃起し、仰角を上げつつあった。彼は今日、さほど射精していないはずだった。
『いや、焦るな。これは精液を放つ速さを競うのではない。たとえ放つのが遅れようとも、飛距離で勝てばよいのじゃ』
艶之進は自分に言い聞かせ、凜の乳房へ目をやって気分を高めようとした。彼女の肌は先ほどの激しい交合の余韻か、まだ薄桃色になっており、一物に絡まる指も汗を含んでしっとりしていた。そして、時折見上げてくる瞳、その目尻が朱を掃いており色っぽかった。
『うむ。やはり、凜どのを介添えにしてよかった。好ましい娘じゃ……』
艶之進の魔羅は次第に張りを帯び、凜の手の刺激に応えて隆々とそびえ立つ。
『さあ、ここからじゃ。小夜之丞、いざ、勝負!』
艶之進に強い視線を投げかけられた対戦相手はというと、満のふくよかな指で魔羅をこすられ、陶然と目をつむっていた。相変わらず覇気はなく泰然とした男だ。だが、かえってこのような男こそ恐い相手だった。剣の極意にもある「剣禅一如」……勝とうという気概などなく何も考えていないかのような相手こそ、心してかかる必要があった。
『知り合いの弓の上手(じょうず)が申しておった。弓手(左手)と妻手(右手)の呼吸が大事だと……』
魔羅への刺激が徐々に強まるのを感じながら、艶之進は以前聞いたことのある弓術の勘どころを思い出していた。
『いくら弓手の押しが力強くても、妻手の引きが甘く、ぐらついていると、矢は力強く飛ばぬそうな……。今、精液を放つのも同じこと。遠く飛ばそうと拙者が力んでも詮無きこと。介添え役の心づくしの手業(てわざ)から生まれる快感を十分に溜め込んでこそ、精液は見事に放たれるはず……』
艶之進は凜を見つめ、「愛(う)いやつ」と心から思うことにした。そうすると、さすられている魔羅に生じる快感の萌芽も華やかなものになる気がした。
見つめられている凜も感応したものか、瞳が潤んでいる。
艶之進がその瞳を覗き込もうとかがみ込むと、凜は腰を浮かして顔を近づけてきた。そして、本日、幾度となく交わした口づけを、どちらからともなく求めた。接吻が始まる。
「おやおや、これは趣向じゃのう。口吸いをして気分を高めながら魔羅をしごかせるとは……」
綾乃がクックッと笑う。隣で老女が険しい顔つきをしていたが、綾乃は「まあ、よいではないか」と言っているようだった。接吻しながらの介添えは決まりに反するのではないかと内心危ぶんでいた用人は、綾乃の様子を見て、競技をそのまま続行させた。
小夜之丞の魔羅を懸命にこすっていた満は、相手方の行動を見て、自分も接吻しようと一瞬考えたが、それだと芸が無いと思い直し、手コキをやめて魔羅への口唇愛撫を施すことにした。
総身が豊満な満は、唇もポッテリしており、それで一物をくわえ込むと、傍目には女陰に魔羅が刺さっているように見えた。
「おお、こちらは吸茎ときたかえ。面白いのう」
綾乃がまた笑う。用人はそれを見て、吸茎もまた規定に抵触することはないのだと判断し、満を制止しなかった。綾乃は上機嫌に声をかける。
「おほほほほ。……満や、吸茎もよいが、精液を呑み込んでしまっては元も子もないぞ」
満は心得ているとばかりに太い腕を上げた。そして、舌先に神経を集中させ、発射の兆しを伺いながら熱心に口唇愛撫を続けた。
一方、艶之進は凜と熱烈な口吸いをしながら魔羅に刺激を受けていた。そして、さらに彼の手が凜の下腹部へ伸び、稽古着の袴の中へと潜り込んだ。
「んんん……!」
凜が切なく腰をくねらす。艶之進の指が女陰を刺激し始めたのだ。
この競技は男が気持ちよくなって精液を放つのが趣旨なのだが、艶之進・凜組は、男女双方とも快感を得て高まり、女の悶えるさまを見て、男はさらに興奮するという算段のようだった。
用人は、さすがにこれは規定違反ではないかと綾乃の顔色を窺ったが、魔羅くらべの主催者はケタケタ笑うものの難色を示すことはなかった。
どんどん横道にそれる艶之進・凜組。それを見て、満は口唇愛撫ですら手ぬるいと思ったか、やおら立ち上がると、袴をパッと脱ぎ捨て、小夜之丞に言った。
「わたくしの肉壺で気持ちよくなってくださいまし!」
四つん這いになり雄大な臀部を突き出す満。小夜之丞は面食らっていたが、綾乃へ視線を向けると、彼女は『良きに計らえ』という顔をしていた。もっとも、隣では老女が「とんでもない」と金切り声を上げていたが、この場の最高権力者が許諾したので、小夜之丞は遠慮なく満の女陰へと魔羅を差し込んだ。
「あひーー、……いい!」
いきなり満が甲高い嬌声を発する。
秘壺の締め付けで魔羅に快味を染み込ませることにした小夜之丞は、彼特有のまったりした腰づかいを繰り出し始めた。
この狂態を目の当たりにした艶之進は『かくなるうえは拙者どもも……』と思い定め、凜に合図して袴を脱がせ、四つん這いの体勢をとらせた。そして手淫により張り詰めていた魔羅を凜の膣口へズブリと突き入れた。
「あああっ!」
本日慣れ親しんだ嵩張り亀頭の魔羅の感触に、凜の指が床の黒繻子へ食い込む。