神は何処にいる?〜神の行方前編〜-1
麗らかな午後。
エイジはコーヒーを飲みながら今後の展開を思い描いていた。
ビジネスとして成り立ってきた宗教プランナー。
あれから何件かの依頼を受け信頼を勝ち獲てきた。
業界で名を轟かすようになりつつあった。
実際殆どの宗教が金銭難や何らかの不安を抱えている事もわかってきた。
高価なお札や壺を買っていく信者もそう多くない。
物思いに耽りながらPCを開くと一通のメールが届いていた。
「エイジ様。
はじめまして。
黒羽会の志乃田と申します。
貴方にぜひ診断して頂きたくメールを送らして頂きました。」
詳細とともに届いた添付ファイル。
そこには黒ずくめの不気味な面をつけた人影が映し出されていた。
来週の土曜に黒羽会へ行く事にした。
土曜。
眠い目を擦りながら煙草に火をつけ黒羽会の総本山へと向かった。
今までとは比べものにならない巨大な建物がそれであった。
特徴としては外壁から屋根まで黒を基調にした設計になっていて見るからに気味が悪い。
中に入ると執事らしき初老の男性が客間へ案内してくれた。
5分後、客間の扉が開きメールにも送られてきたあの不気味な仮面をつけた小柄な男性がやってきた。
「お待たせしてすみません。
黒羽会創始者の志乃田です。
エイジさんを此処にお呼びしたのは折り入ってお頼みしたいことがあったからです。
実は私はもう長くありません。悪性腫瘍を患ってしまい残念ながら治る見込みがない。
そこで無理は承知ですが、貴方にこの黒羽会の創始者の座をお譲りしたい。
条件は他人に素性を明かさない事とこの事は内密に願いたいのです。
黒羽会の財産や資本は貴方に譲渡します。
是非ともお引き受け願いたい。」
と深々と頭を下げた。
簡単に言うと余命幾ばくの志乃田さんに代わって黒羽会の創始者として変わり身を演じてほしいそうだ。
エイジは一つ返事で引き受けた。
またとないチャンスだった。
黒羽会の長は人前では決して仮面を外すことが許されていない。
ザクションという儀式によって信者の傷みを取りのぞくという。
財政的には黒字であった。
志乃田に案内されながら屋敷をまわった。
黒に統一された室内はその落ち着きのなかに不気味さを感じさせた。
「さてエイジさん。
今日もザクションの時間になります。
早速ですが、ザクションの方法をお伝えします。
私の仮面も貴方にお渡ししなければいけませんね。」
仮面の下から現れたのは何処か影のある70才近い老人の姿だった。
ザクションは一対一で行われる。
信者の額に手を当てながら問い掛ける。
ただそれだけだった。
とにかく話を聞いてあげる。
そんな事でも人の傷は癒えるのだった。
話し終わると志乃田は自らの部屋へと姿を消した。