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【学園物 恋愛小説】

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想[5]-2

暁寿の背中はすごく心地いい。いつもと変わらない馴れ親しんだ大きな温かい背中。
私は目を閉じる。いろいろとどうでもいいようなことを考える。
昨日の白い車の人って未宇の彼氏なのかなぁ。でも、そんなこと一言も言ってなかったし…あ!また年上のお友達かっ。何人いるんだろ…?そういえばこの間遊びに行った時は黒だったな。その前は赤のスポーツカー。で、その前は確か…ん〜確か…その前も白い車。そうだ、白かった。白い車…白…白い傘…名屋君。
そういえば、傘、帰さなくちゃ。まだ家にある…。いつ帰そうか。明日?明日は土曜日だからダメだし、日曜日もダメだし、じゃあ月曜日か。わざわざ教室まで行って帰すのも気まずいしなぁ。前みたく放課後ばったり会えるかなぁ。何とかして帰さないと、彼女さんに悪いよね。
「主里、家に着いたぞ」
ふと暁寿の声がして、目を開けると、そこはもう私の家の前だった。
「うん」
「危ねぇ!」
私は荷台から降りようとした時にふらついてまい、暁寿が抱き留めなかったら危うく倒れそうになった。
「ちょっとだけ、一人で立てるか?」
「うん」
暁寿は家の脇に自転車を停めると、私から家のカギを受け取り、ドアの鍵を開けて私を部屋まで運んでくれた。
「ありがと」
「気にすんな!黙って寝てろ」
私はブレザーをハンガーに掛けると、もぞもぞとベッドに潜り込んだ。
寒い…。
瞼は重く、息は上がり、悪寒が走った。明らかに重症…。
私はもう一度「ありがと」とお礼を言った。
「だから気にすんなってば!」
暁寿は困ったように笑った。
「いやぁ〜、主里の部屋に来るの久しぶりだなぁ」
「そうだね」
暁寿は部屋を見渡しながら続けた。
「前に来た時は夏だったよな!?そんでここでそうめん食った!!」
「そうだよね」
「超うまかった!!」
白い歯を見せて暁寿は笑った。
「よかった」
私は笑ってみせた。
「…あのさ…風邪引いたらキスした相手に風邪がうつって自分は治るっていうの、主里知ってる?」
暁寿は急に真剣な表情になった。
「…え?知ら、ない…」
暁寿から目線をずらした時だった。
「………っ!?」
私の唇が塞がれた。
私は出来る限り、暁寿から顔を反らした。
「や……っだ!!」
「オレにうつせよ…」
暗く低い、そして感情も何もない声が耳元で響いた。そう、それは今日、先生が私に言ったような冷たく上辺だけの声…。

怖い…!

「いや…だっっ!!」
私は懇親の力で暁寿を突き飛ばした。フローリングの床の上で、目を大きく見開いた暁寿が後ろに手を突いて座っていた。
「…暁寿に風邪うつす気ないよ」
私は、暁寿に背を向けるよう寝返りを打った。立ち上がる音がする、カバンを掴む音、床の上を歩く音…。思い切り目を瞑った。鼻の奥がツンと痛んだ。
「…主里が上の空だったのは、オレの…オレの気のせい…だよな?」
寂しそうな暁寿の声がした。さっきとは別人のようだ。
私は何も答えない、いや、答えられなかった。
「じゃあ…オレ帰るから…」
乾いた音を立てて部屋のドアが閉まった。


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