陽は落ちた……-4
『絶対に離すな!危ねぇぞ!』
「う"ぐぐぐッ!む"〜〜〜〜ッ!」
『スイッチ押しまくれ!絶対に切るなよ!』
正当防衛か否かを自問自答するべき相手ではなかった……自分の甘さに後悔した時には既に汚い車内に連れ込まれており、この激痛がスタンガンの電撃によるものだと解った時には、もう身体の自由は利かなくなっていた。
『会いたかったぜ、かずさ先輩ぃ。自分の部下が痴漢逮捕なんて華々しいコトやって、鼻高々だったんだろ?』
『その自慢の部下の新庄由芽って奴を探してるんだろ?今から会わせてやるよぉ』
「ッッッッ!!??」
数年前に感じた《不安》は、今になって現実となって目の前に現れた……。
由芽はこの男達に拉致されたのだ。
月曜日の朝に捕まえた痴漢の仲間の逆恨みに遭って……。
『なんだあ、この指輪は?これがファミレスの中で見せびらかしてたマリッジリングかあ?』
『スマホの中もフィアンセとのラブラブツーショットだけだぜ。ムカつくなあ』
(ふ…ファミレスッ!?あ、あの時から私達を…ッ)
この犯罪者達の動きの速さに驚きを隠せなかった。
間違いなく、あの電車の中に痴漢の仲間が居たのだ。
そして直ぐに由芽は尾行され、仕事で同行していた自分の存在まで知られてしまったのだ。
『明日から二人仲良く無断欠勤だ。普通の会社なら三回くらい続いたらクビだよなあ?』
『なあに心配すんな。かずさ先輩には《新しい仕事》ってヤツが待ってるからよぉ。へっへへへ!』
(く、車を止めてッ!誰か気付いてぇッ!)
指紋を拭き取られたスマホは、かずさの目の前で外に放られた。
誰かに助けを求める手段は自力で逃げ出す以外に無く、それはこの状況下では不可能である……。