お隣へ-2
少し緊張していたが、それでも亨の平静な声に、閉じられた眉ねがピクリと動き、智美は恐る恐る目を開いた。自分を間近に覗き込む童顔の春奈の視線と重なった。
「ひっ…」
「智ちゃん、どうしたの?」
不思議そうに聞く春奈の姿を見た智美はほっとした。卑猥な下着姿か最悪は全裸を覚悟していたが、その予想に反して春奈は膝下のスカート姿だったのだ。
「い、いいえ、春ちゃん。今日はありがとうね」
「こちらこそ、来てくれて嬉しいよ。さあ、入って」
春奈に促された2人は、明を先頭に勝手知ったるリビングに移動した。
後ろに続く智美の耳に春奈が囁いた。
「うふふ、その顔はあたしが裸で出迎えるって思ってたでしょ」
「そ、そんなこと!」
「うふふ」
図星を突かれて声をあげる智美を楽しむように、春奈は微笑んだ。
部屋に入った2人は、にこやかに微笑む明に迎えられた。
「やあ、2人ともよく来てくれたね」
声をかけた明の視線が、智美と亨に交互に向けられたが、やがてその視線は智美の股間にチラチラと注がれ始めた。
(やだ、春ちゃんのことばかり気にしてたけど、あたし、明さんにオナニーシーンを観られてるんだった…)
その遠慮のない明の視線は、明らかに自身の割れ目を想像しているものだった。羞恥を覚えた智美は全身が熱くなり、スカートの上から股間を手で隠した。
焦る智美を見て、明がニヤニヤと卑猥な笑みを浮かべた。
(どうしてこんなことに…)
一方、智美のそんな状態をスルーして、亨は春奈の股間に視線を向けていた。
「うふふ、亨さん、座って」
こちらも手で明の視線から股間を遮ると、春奈は意味深な目を向けて促せた。
「ほら、智ちゃんもそんなところで固まってないで座って。時間がなかったから、簡単な物しか出来なかったけど、一生懸命に作ったのよ」
促された2人が隣り合わせに席に着くと、示し合わせたように智美の前には明が、そして亨の前には春奈が向かい合うように座った。
「凄いな」
テーブルに並ぶ料理を見て亨がつぶやいた。
「ホントに。でも、これって…」
智美は違う意味で感心していた。
牡蠣フライを始め数種の牡蠣料理、ニラレバ炒め、山芋卸し、オクラサラダ、そして、にんにくの丸焼き。そこに並ぶ食材は【ある意図】を持っているのが明白だったからだ。まさしく智美が亨を勃たそうと、明日から使おうと考えた食材ばかりだった。
「うふふ、亨さん。今晩のセックスのためにいっぱい食べてね」
「ちょっとお!露骨になに言ってるのよ」
春奈の露骨な言い方に、智美は目を見開いた。
「いいじゃないですか。昨日からヤリ捲ってるのをお互いに知ってるんだから。今さら隠しても仕方ないでしょ」
「やめてください…」
明が智美を宥めたが、卑猥な笑みを浮かべたその視線には遠慮はなかった。
「そうだな。今さらなんだから、智美もイチイチ目くじらを立てるなよ。智美だけだぞ、そんな顔をしてるのは」