モヤモヤする智美-1
【モヤモヤする智美】
亨と明との通話で、一喜一憂した智美だったが、一旦冷静になると、モヤモヤした気持ちが涌き出て、その後の家事はなにも手につかなかった。
一方、表情の弛みっぱなしの亨は、今夜のために精力剤を買いに行くと言って出ていった。
「あたしに使うためだよね」
玄関先で見送る智美は、念押しを忘れなかった。
「それしかないだろ。ははは」
1人になった智美はリビングのソファーに座ると、深くため息をついた。幾ら念押しをしても、軽く返事をする亨に不安は拭えなかった。
「はぁ…はぁ…はぁ…」
モヤモヤをまぎらわすために、下着の中に手を入れてクリトリスを撫で始めた。愛液が下着を汚すのを厭い、下を脱ぎ、ついでにブラジャーも外した。乳首を摘み、湧き出す愛液、それを絡めた指がクリトリスを撫でる速さが徐々に増してきた。
「あああっ…、イクッ…」
絶頂を迎えた智美は、しばらくその余韻を楽しんでいた。すると、玄関ドアが開く音がした。
「ただいま〜」
続いて聞こえる彩花の声に、智美はハッとなった。
「大変!」
午前中のクラブを終えた彩花が帰宅する時間だった。智美は慌てて脱ぎ散らかした下着を手に取った。
彩花が靴を脱ぎ、廊下を進む気配がした。自慢の対面キッチンのLDKには身を隠す場所もない。また、建物の構造上、廊下の先にある浴室にも逃げ込めなかった。
判断力の低下した智美は、咄嗟に彩花の目から逃れる唯一の手段に出た。リビングのはき出し窓を開けると建物の外に飛び出したのだ。
智美は庭から玄関に回り、中の様子を伺いながら、そうっとドアを開けて中に入った。
「あれ?お母さん、どこ行ったんだろ」
リビングのドア越しに、彩花の声を聞きながら、智美は足を忍ばせて浴室に入った。
手にした下着を濡れない位置に置いてからシャワー栓を捻り、ようやく安堵の吐息を洩らした。
「ふう、セーフ」
しかし、全然セーフじゃなかった。智美が鼻歌まじりでシャワーを浴びているとき、春奈の家の庭でその会話が交わされていた。
「あれ?母さん、スマホでなに撮ってるんだ?」
同じく帰宅した春奈の息子の翔が、庭の片隅で智美の家にスマートフォンを向けていた春奈に声をかけた。
「あら、お帰りなさい。珍しい生物が居たから撮ってたのよ」
「珍しいって、なにが居たんだ?」
「うふふ、直ぐに逃げたから、よくわからなかったのよ」
「撮った画像を見たらいいじゃないか」
「それが残念ながら間に合わず。なにも撮れてないのよ。それよりもお腹減ったでしょ、直ぐにご飯をするから、入った入った」
翔を誤魔化し、家の中に追いたてた春奈は、今、撮った動画を明に送信した。
「うふふ。超不思議生物【まんこヌレヌレ魔人】。さすがに翔には、割れ目モロ見え動画は見せれないかな」
つぶやきながら再生した動画には、全裸で庭に出てきた智美の股間の割れ目がはっきりと映っていた。春奈はその動画を観ながらスカートを捲り、ノーパンの割れ目に指を這わせた。
「あふん♪あれ?ここにも【まんこヌレヌレ魔人】が居たあ♪」
春奈は自身の状況に嬉々とした。
そしてもう一人、智美の破廉恥な姿を見ていた者がいた。しかし、こちらは少し残念がっていた。
「しまった!スマホは充電中だった」
智美の家のお向かいさん。大岩老人は自身の不覚に嘆いていた。
早朝から智美の家をモニタリングしていた大岩老人だったが、変化の無さに退屈になり、スマートフォンでエロ動画を流し観をしてたのだ。
そして、スマートフォンの電源が落ち、充電し始めた直後に、半裸の智美が飛び出してきたのだ。慌ててポケットを探ってスマートフォンを探したが、後の祭りだった。