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七日目のプール
【青春 恋愛小説】

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ガラスの足場-1

あたしの毎日はあまり劇的に変わっていなくて、ごくごく普通に18の夏を送っている。
夏休みも間近で皆が浮き足立つ時に、あたしは未来に何の希望も持っていないけれど、いつも通りの夏。


「美音は夏休みどこか行くの?」

10分間の休み時間なんて足りない、とでも言うように仲間内の話題は夏休みの予定のことばかりだ。

例にもれず、ここ数日で何回目かの質問をされ、内心微妙な気持ちになりつつもお決まりの台詞を返した。

「特に何もないよ」

そっけないと言われればそれまでだけど、こうやって返せばたいていの場合質問は終わる。

思惑通りに話は他の子の予定へと逸れ、あたしは聞いているふりをしてほほ笑みながら、こっそりと意識を移した。


また、涼のことばかり。


付き合ってるのかと聞かれたら困るけれど、付き合うという行為が『二人一緒にいること』であるならば、付き合ってると言えるだろう。互いの気持ちなんて理解しすぎているくらいだ。



「やっぱ海行きたくない?近場でいいからさー」

早苗と目が合ったから、とりあえず適当に頷いた。



―たまに考える。ここまで涼のことを理解しているなら別に無理矢理傍にいる必要なんてなかったのかもしれない。裕也に別れを告げてまで。

だけどやっぱりこんな考えはあくまで『もしも』だし、独占欲が強い涼はそんなこと許さない。
人に干渉されることは嫌いなくせに、自分の物は逃がさないから、本当にいい性格だと思う。

あたしの気持ちはシンプルで、『涼にあたしのことを少しでも気に掛けてほしい』それだけ。あたしという存在を脳内で飼っていてほしい。
涼は自分以外にはとことん興味が無いから、望まれたことくらい答えないとあたしの望みは叶わない。馬鹿な女だと笑ってもいいからあたしのことを考えて。


そのためなら何でもしてしまいそうで、たまに恐くなるけれど。



少し前までは涼を思うことが苦しかったから、逃れるために他の人と付き合って取り繕っていた。その人達といると楽しかったし、健全な恋というものを経験することができた。裕也との日々も本気だったし、本当に好きだった。

ただ心にはいつも涼が居座っていて、時折たまらなく会いたくなってしまうから、誰もあたしの隣に長くはいなかった。最優先はいつも涼。それはあたしの中で昔から変わらない、変わってはいけないルールだから。
「…よし決定ー!……ねえ美音聞いてる?」

ぼんやりとネガティブなオーラを放っているところに明るい声を浴びせられて、驚きに体がびくついた。

「…え?…ああ、うん。いいんじゃないの?」

また適当に答えると、早苗はにかっ、と快活に笑った。

「じゃあ夏休み始まって最初の日曜日、駅集合ね。各自水着を忘れないこと、以上解散っ!」

チャイムが鳴るとともに早苗が言った。


…水着?


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