未知の島-2
紀子、ほのか、菜々子が「裸のオリンピック」への参加を決めてから数日たった。3人は真夜中のスポーツジムにいる。3人は観衆の前で全裸になるのに慣れるための第1段階として全裸でのトレーニングをすることにした。ただ、営業時間中に一般利用客がいる中で全裸トレーニングをやるわけにはいかないので、営業終了後にプールを使わせてもらうことにした。紀子と菜々子は水泳競技に参加するためプールで泳ぎこみ、陸上競技に参加するほのかはプールサイドでゴムチューブを使ったトレーニングを中心に取り組み、気分転換で泳ぐことこともある。
「菜々子、スピード落ちないね。シンクロやってたから?」
「シンクロやってた時はもっと泳いでましたよ!」
マスターズ大会に参加している紀子と菜々子は泳ぎこんでもすぐに疲れることはないが、高校卒業してから体力維持程度のトレーニングしかしていないほのかは思いのほか早く疲れてしまう。
「競技用のトレーニングを久しぶりにやるとしんどい…。走れるかな?」
「今からそんなこと言って! なんでやろうと思ったの?」
早くも弱音をこぼすほのかにプールから紀子が檄を飛ばす。そうするとほのかはハッとする。
「そうですよね。弱音はいていられませんよね」
ほのかは高校卒業した後に芸能界へ進んだ。しかし悔いを残さずに陸上から転身できたとは思えず、モヤモヤがわずかばかり残っていた。この大会に参加したのはアスリートとしての区切りをつけるためだった。
ジムでのトレーニングを始めて1週間。ほのかは紀子とともにある大学のグラウンドにいた。紀子は大学時代の友人である陸上部の監督に頼み、深夜にほのかのためにグランドを使わせてもらうことになった。ほのかは薄暗い中全裸で何本も直線コースを駆け抜けていく。紀子も時折一緒に走る。
「どう? 裸でダッシュするのは?」
「気持ちいいですね! 高校の時よりも風が気持ちいいです!」
ほのかの身体はだんだん赤みを帯び、バストトップが硬直している。用を足さないのに股間も湿ってきた。ほのかの気持ちは身体を交わらせた時のような高揚感に満たされてくるように見えた。紀子にもいつか感じた高ぶりを取り戻しているような気持になっていた。全裸トレーニングが始まり3か月。ついに戦いの舞台へ渡る日が来た。