アナルヴァージン喪失 (3)-2
Fが手を止め、ゆきに尻を前後に動かすように促すと、妻は戸惑いつつも自分で尻を動かして性玩具を挿れたり抜いたりし始めた。なんという恥ずかしい行為。
「すごい眺めだよ、ゆき。四つん這いでそんなお尻振って」
ヌチャ……ヌル……ヌチャ……ヌチュン……ゥ……ヌリュ……チュポン……
映像がなくてよかったと始めは思ったが、ないと想像が無制限に広がりそれはそれで辛い。目の前の大画面テレビに映し出されている「ゆき」フォルダーの画像スライドショーを見る。さきほど送られてきた写真が表示されている。乳首の突起を除いては、どう見ても清楚な美人妻である。すれ違う街ゆく人もまさかこの女性がわずか二十分後に、肛門にアナルビーズを突っ込まれてよがり狂うことになるとは想像もつかなかっただろう。
「お尻が勝手に動いちゃうのかな、ゆき」
「あぁ……ごめんなさい……恥ずかしいよね……ごめんなさい、あぁ……はぁ……ん……」
「大丈夫、とっても可愛いよ」
「んん……ぁあ……Fくん……」
ラブホテルのベッドの上で四つん這いになっているゆき。高くつきだした尻の中心から、アナルビーズが突き出している。私の妻は今、男に尻を向けて自分の意思のみで動かし、アナルビーズの抜き挿しを続けているのだ。Fの手に握られたそれを尻をつきだし窄まりの奥深くまで挿し込み、また抜いていく作業を繰り返している。
「あぁん……あぁ……はぁ……はぁ……」
「どうして欲しい?」
「動……かして」
「自分でやってごらん」
Fがおもちゃをゆきに握らせると、ついに自分で尻穴に出し挿れをはじめてしまう。
「あぁ……ん……」
躊躇しながらもアナルビーズに手を伸ばし握りしめる。ヌチャヌチャという音が聞こえてきた。
「いやらしいよ、ゆき」
「あぁ……ダメェ……見ないでください」
手の動きは徐々に早くなる。突き刺す深度は深く、ストロークは長く。アナルで感じていることを隠そうともしない妻の嬌声がホテルの部屋に響いている。
「あ……あ……あぁ……だめぇ……はぅ……!……ん!」
ヌチャ……ヌチュ……ピチャ……シュプ……チュプン……ヌチュ……チュプ……
「ぁああ……どうしよう私……ごめんなさい……こんなことしてるのにとまらないです……」
「大丈夫だよ、俺も興奮してる。まさかあのゆきがアナルオナニーする姿を見せてくれるなんて」
「ぁあ……あああ、あ、あだめぇ……そんなこといわないで……恥ずかしいよぉ……!」
「アナルオナニーしてるゆき素敵だよ。もっとアナルオナニーで気持ちよくなるとこ見せて」
「ぁああいじわる……そんなのやだ、あぁあ! 気持ちいい……だめぇ……!」
妻の手は止まらない。
「あれ……なんかイッちゃうかも……! どうしよう、ぁ、ぁああ! イッちゃう……ぁあ!」
「すごいよゆき。アナルオナニーでイッちゃうの?」
「だってなんか……ぁ! ぁあああだめだめ……イッちゃう」
「旦那じゃない男にアナルオナニーじっくり見られながら。恥ずかしすぎるよゆき!」
「ぁあああ恥ずかしいよ、ごめんなさい……! あぁ……はぅ……っ!」
ニチャニチャ、グチュグチュと汚らしい音が一際大きくなる。
「ぁあああもうだめ……! イク、ぁああイクイクイク……! 気持ちいい、どうしよう……!」
「人妻がアナルオナニーで……旦那にも見せたことないアナルオナニーで……!」
「やぁ……! 見ないで……ぁあああ! だめ、見ないでイッちゃう、イッちゃうのぉぉぉ! ぁああ!」
イヤホンからは、ハァハァハァハァというゆきの息遣いだけが聞こえてくる。
テレビ画面には、よりによって結婚式のフォトセッションでキスをするゆきの表情がアップになっていた。「アナルオナニー」という最低最悪の行為からこれほど遠い瞬間もないであろう。同じ女性とは思えない。
少し恥ずかしそうな笑みを浮かべ、目を閉じ唇を軽く尖らせた新婦のゆき。昔からゆきは、小さな女の子の「チュー」のように唇を突き出す癖がある。この写真もたしかカメラマンに唇が出すぎていることを指摘され、笑って少しひっこめた、その瞬間を捉えたショットである。
滑稽なシチュエーションでも、できあがった写真はそのまま結婚情報誌の表紙になりそうな、透き通るような美しさを湛えた幸せそうな新婦である。このときのキスの相手である私は、まだゆきが性に奥手な女性だと勝手に信じていたのだから間抜けにも程がある。
「ねぇ、チュウして……」
しばらく無言だった現実のゆきが、甘えた声でキスを求めている。画像と同じ行為のはずなのに、何もかもが違う。純白のウェディングドレスの変わりに、乳首も陰毛もアナルの皺も丸見えのセックス専用ランジェリー。静謐な教会から隠避なラブホテルへ。手に持ったブーケはアナルビーズに変わった。唇もどうせあざとく尖らせていることだろう。
何よりキスの相手。愛する妻が今キスをおねだりしている相手は、永遠の愛を誓いあった私ではない。こんな未来、このときのゆきは想像できただろうか。
「そうやって『チュウして』って甘えてくるの、昔から変わってないよな」「えぇ? そうだっけ。ふふふ……」「唇も相変わらず尖ってる」。チュッと唇を重ねる音。「ゆきは何度言ってもどうしてもここが尖っちゃう」。笑い声。そしてキス。「いい歳して私恥ずかしいね」「ホント、三十八のくせに可愛らし過ぎてびっくりだよ」。
美人に甘えた声で「チュウ」をねだられて嫌な気持ちになる男などいない。
「……ほら、手を止めないで」「……こう? これでいい?」「そうだよ。手は動かしたまま」「ねぇもっとチュウして……」。耳を塞ぎたくなる。「Fくん……ちゅぅ……じゅる……ちゅぅ……」。アナルビーズを尻穴に深く挿し込みながら不倫キスする美人妻。ついさっき、はにかみながら行ってきますのキスをしていた私の妻。