探偵、依頼受付中 【弁当】-3
「で、肝心の暗号は?」
『この暗号はアルファベット4文字を表します。
●〇●●●〇●〇●●〇〇●〇●〇
解けなかったらバカ……という感じです。是非解いてください。』
「中々挑発的な文章だろ」
嬉しそうにニヤニヤしながら望を見つめる命。
望は食い入るように暗号を見ているが……。
「先生、さっぱりです」
「まあ、腹が減っては戦はできぬ、まずは出来立ての弁当でも食べようじゃないか」
と言って命は大きなサーモンカツを口いっぱいに方張った。それに倣い、望も暗号を見ながらノロノロと弁当の蓋を開けるのだった。
それから10分後。
望は相変わらず弁当を食べながら暗号を解こうとしている。そのせいで弁当を食べるペースが遅く、命が弁当を食べ終わるころにはまだ三割程しか食べていなかった。
「ご馳走様。さて、望君。今は弁当に集中しなさい」 命はそういって紙を取り上げる。
「ああ! もう少しで解る所だったのに」
望は御飯粒を飛ばしそうなほどの勢いで叫ぶ。
「そういう嘘はやめたまえ。弁当を食べ終わってからまた考えるといい」
命の言葉に望はしぶしぶ頷き、冷たくなった弁当屋自慢のから揚げにかぶりついた。
「ふむ、黒い丸と白い丸ね」
「それが何かわからないんです。黒と白の順番に規則性も見当たらないし……」
口の中でから揚げをもふもふといわせながらしゃべる望。
「暗号というくらいだからな、望君のわからないところに規則性があるのだろう。とりあえず物を飲み込んでからしゃべりなさい」
望は湯呑みに口をつけ、お茶と共にから揚げをごくりと飲み込んだ。
「アルファベット4文字なら、黒丸が……」
そんな望を他所に、命は顎に左手をあて、ぶつぶつとなにかを呟きながら暗号を解いていった。
そして望が弁当を食べ終わるころ、命の声が事務所に響いた。
「ふふふ、それで『解けなかったらバカ』ということか。なるほどな!」
「先生解けたんですか?」
命の言葉に望は歓声をあげた。
「まあな、ほら」そう言って暗号を望に渡す。
「教えてください!」
「なにを言っている? 私の助手なんだ。それくらいの暗号解けないでどうする。素人に『バカ』呼ばわりされてもいいのか?」
それは良くないが、解らないものは解らない。望はお菓子をねだる子供のような目で、命を見つめた。
「先生、せめてヒントを……」
「んー嫌がる私を無理やり雨の中連れ出しておいて……ヒント?」
(うう、そう言われると……)
憎たらしいくらいニヤニヤしている命を見て、望は冷や汗を流す。
「まあ、ヒントくらいならいいだろ。丸が全部で16個あるだろ。で、4文字のアルファベットを表すんだから、普通に考えれば丸4個でアルファベット1文字を表すわけだ」
「ということは
●〇●●、
●〇●〇、
●●〇〇、
●〇●〇、に分けるんですか?」
「そうだ、それで二番目の塊と最後の塊は同じだろ?あとは少し考えればわかるさ」
(えっと、ここまでを整理すると答えは『△□▲□』になると)