お姉さまのミリタリー講座〜狙撃編その1〜-1
突然だがこの世界での女らしい事とは巧みに銃が扱える事と料理が上手い事である。
今、私は最高にそれを実践している筈だったのだが、生憎テーブルの上に有るのは『焦げた何か』であった。
隣にはまるで店の前に見本として置いても良いくらい綺麗に盛り付けされたハンバーグが置いてある。
「お姉さま……。」
私の視線を感じたのか由衣が励ますように私に声をかけてくる。
白を基調にした私の学校の制服がエプロンに包まれてとても可愛らしいのだが…。
「ほっといて…。」
今の私にはとても由衣に抱きつく程の元気が出なかった。
私の学校では二学年と三学年の交流日と言う日が有る。
一日を二学年と三学年の混成班で調理実習や射撃実習等を一緒に行動し、信頼関係を深めるという目的が有るらしいが詳しい経緯は良く分からない。
そんなわけで今日一つ目の授業…調理実習に挑んだのだが結果は敢えなく惨敗。
同じ班の人達が綺麗に料理を作る中私だけが炭状態であった。
「大丈夫ですよお姉さま…次の時間は射撃実習ですから。」
「そうですよ!校内トップのお姉さまの射撃の腕が有れば料理の腕なんてカバー出来ます!」
出来た私の料理を見た由衣と同じ後輩の…のり子ちゃんがすかさずフォロー(多分)を入れるのだが既に崩れた私のプライドが癒えることは無い。
だが、いつまでもウジウジしているのもしつこくて良くないので気持ちを切り替える事にする。
「由衣。」
落ち込んでいた私の急な呼び掛けに驚いたのか由衣の肩が少し揺れた。
「今週の休日は暇かしら?」
私がそう言うと少し考えるそぶりを見せてから答える。
「えっと…今週は暇ですけど。」
「それなら…私の家に来てくれない?」
もちろんただ遊びに誘うわけではない。
「…お料理を教えて欲しいの。」
由衣は私と違って料理は得意中の得意らしく、実際今回も見た感じ班の中では一番綺麗に出来ていた。
その代わり銃器の扱いは不得手で、最近は良く私の家に来て勉強している。
「お姉さまのお役に立てるなんて…嬉しいです。」
私の珍しいお願いを聞いた由衣は本当に嬉しそうだった。
調理実習と言うものは作るだけではなく出来上がった物を食べるという行程が有る。
「美味しいわ…この炭。」
もちろん私ももれなくその行程を楽しんでいた…表面上は。
惨状となっている私の皿を見て私の班の人達が少し苦笑するが私の意外な一面が見れたと喜んでいる。
「お姉さま…少しどうですか?」
笑顔で炭を食べる私を見かねたのか由衣が私に自分のハンバーグを勧めて来た。
「良いの?」
食い意地がはっていると思われるのは嫌だが今の私は味覚破壊寸前だったので由衣の誘いを断る理由は無い。
「お姉さまに食べて貰えるなら…。」
そう言うと由衣は一口分に切り分けたハンバーグをフォークに刺して私にフォークを向けるように差し出した。
…これで「あーん」なんてやったら新婚夫婦のような構図が出来上がる。
でも、女同士だから『夫婦』はおかしいか…じゃあバカップルで。