亀裂-2
”岡部さんが私たちのことを言いふらしているみたい”
高杉にメールを送るとすぐに電話がかかってきた
「やっぱりそっちにも行った?申し訳ない…」
「いいのよ。でもどうして知ってるんだろう?」
岡部美紀が私を嫌悪しているのは知ってるし、その理由もわかっていて、その原因が電話口に居るのもわかっている…
「別にどこかで見た訳じゃないらしいけど、この数カ月くらい言いふらしているらしい。本当にすまない」
「特に見られたりした訳じゃないなら、もう岡部さんとは付き合いもないので私は良いけど、しばらく会わないがいいね?」
「そんなことないけど…でも…」
歯切れの悪い高杉の言い方に引っかかって「もしかしたらそっちにも何か言ってきてるの?」
「…大丈夫だよ…」心なしか弱弱しい高杉の返事に何かがあったとわかった
それから私たちは待ち合わせをやめた…
そんな高杉に再開したのは桜の季節だった。
勤め先の紹介で私はトリックアート展のスタッフを期間限定で手伝うことになり、受付や事務作業を行っていた。
子供やカップルが主でその日も休日ということで賑わい、私は入場管理に勤しんでいた。
子供の声やそれに応える大人の声に混じって聞き覚えのある声が耳に入ってきた。
顔を上げると男の子と女の子と手を繋ぎ、奥さんらしき人を後ろに連れた高杉が目に入る。
「子供2枚と大人2枚をお願いします」
私に気付かず、言う高杉に私も気付かない振りをして「3000円になります」
そう言う私に気付いたようで高杉が私を見つめてくる。
動こうとせず、視線を外そうとしない高杉に家族が変に思うかも知れないので私から視線を外して
「さぁ〜どうぞ〜楽しんで来てね」言いながら子供たちにチケットを渡すと
「ありがとう」チケットを持った子供に引き摺られるように高杉は奥に入っていった。
家族に囲まれて幸せそうな高杉を見て、関係を清算する心の準備を私は感じはじめた。