出会い-1
『んっ…んぅ』
まだはっきりとしない意識の中であたしは、さっきから喧しく鳴っている目覚まし時計のベルを止めようと枕元をたたく。
『もう。分かっているってば』
そう言いながら、あたしは時計が差している時間を見る。
『何よ。まだ八時じゃない。』
目覚めの後は頭の回転が悪くなる。
あたしは呑気に背伸びでもしていた。
『って、八時ってなによ。めちゃめちゃやばいじゃん。』
お約束どおりの展開に自分のだらしのなさを恨みながら、あたしは壁に掛けてある制服に手を伸ばす。
『もう。連休明けに遅刻なんて、絶対に弛んでいるなんて言われるんだろうな』
あたしは急いで服を纏うと、鞄に菓子パンを突っ込んで、家を飛び出した。
『はぁ。ボタンを掛けながら登校って女の子としては失格よね。はぁ。婚期逃しそう』
そんなたわいもないことを頭にかすめながらあたしはバス停へと向かった。
出会い
あたし、小岩井彩夏って言います。
共学の高校に通っている二年生。
まあ、特別素行が不良と言うわけじゃないけど、遅刻の常習犯になっています。
事実、今学期になってからも三回遅刻しちゃいました。
『はああ』
あたしがバス内で深くため息をついた。
バス内にはお勤めしている人とか、他校の生徒とかいるけど、あたしの学校の人はいないみたい。
『あれ?小岩井さん』
あたしは後ろからかけられた声に振り向く。
見るとあたしの学校の制服を着ている女の子がそこにいた。
『あっはい。えっと、あなたは確か』
あたしの言葉に詰まっている様子を見て、彼女の頬が緩む。