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天神様は恋も占う?
【青春 恋愛小説】

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清爽なキッス-1

 国営放送においてはこの言葉を使ってはならないそうだが、暦の上で世間一般にはゴールデンウイークと言うような時期になった。何処のニュースでもワイドショーでも、帰省ラッシュや観光旅行をする人達でごった返す、首都高速道路や新幹線のホームの様子が全国に放送されている。
 今朝の放送では、首都東京にそびえるあの赤い塔や、千葉県にありながら首都の名を冠した世界的な展開をしている総合遊園地が映されていた。
 だけども、行楽気分に包まれた日本にありながら、中野純一はそんな惚けている場合ではなかった。というのも。
 「もしもし、隼斗? 起きてるか? ――支度は? ったく、今日くらいはやる気出して来いよ、折角の試合なんだからな!」
 今日は純一と、彼の幼なじみでもある小松島隼斗が所属している、月雁高校野球部が練習試合を行う日なのだ。



 この試合を知らされたのはゴールデンウイークに突入する2日前だった。
「よし、皆集まったな」
 この日の部活終わり、俺の学年・2年生の日本史教師であり、野球部監督である小林銀次郎【こばやし・ぎんじろう】は部員を集合させ、もう間もなくに迫った連休の予定表について説明を始めた。
「とりあえず、見たままのプランだからな。折角の連休だから1つだけ練習試合を組んでおいたから」
 と、監督はいつも通りの軽妙な口調で告げた。だけど、その試合の相手はそんな軽い気持ちで手合わせできる相手ではなかった。
(なんで、菊水館となんだよ……)
 そう。相手はこの界隈で最強打線を誇る私立菊水館【きくすいかん】高校との試合であった。純一が横のほうを見てみると、チームメイトのほとんどが、首をかしげたり、開いた口が塞がらなかったりと、どう見てもやる気を失っているようだ。
 無論純一もその一人だった。というより、何故一介の、しかもどちらかと言えば弱い方(良く言えば“中の下”くらいか?) に分類されるであろう公立高校であるこの月雁高校野球部が、常勝軍団の菊水館と試合ができるのか、そんな疑問が沸々と湧き出てきた。実力差もさることながら、あちらの学校はスポーツ強豪校と呼ばれるだけあり、設備も相当素晴らしいものが揃っているらしい。更には、今年の春のセンバツに県代表として出場したのもこの菊水館高校なのだ。
 県内にはもう2校ほど強豪と呼ばれている学校があるのだが、それはまた別の機会に話すとして。
 果たして、そんな強いチームと戦ったところで、俺たちは試合を“試合”として成立させることが出来るのだろうか?
 監督の様子から判断すると、そんな心配は無駄なのだろうけど。


「練習試合?」
「そう、だから4日はちょっとな……」
 そう言って純一は少しだけ渋い顔をした。
 ゴールデンウイークのスタートも前日に迫った4月28日、菅原梓は、久しぶりに部活が休みになった純一とともに帰路に就いている。

 とにかく、久しぶりに純一と一緒に帰ることができたので、連休中の予定について話を振ってみた。自分が入っている硬式テニス部の活動も無くて特に予定の入ってない4日に、ちょっと遠出をしようと誘ってみた。純一は文頭のリアクションを取った、というわけだ。
 その後試合についていろいろと聞いてみると相手は県内屈指の強豪チームらしく、梓には純一もいつものやる気が鳴りを潜めているように見えた。
「それじゃあ、応援に行ってあげるよ!」
 梓がそう提案すると、純一は目を瞬かせた。
「え? いいって、別に」
「どうして?」
「だって、試合に出るのは、ほとんど3年だぞ。俺たち2年は出られるかどうか分かんないし」
 そう言って純一は憂愁を帯びた雰囲気を見せながら、提案を拒否する。


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