隠し撮り自粛中-3
「確かに。ただ、いくら全裸でも、ごめんなさい!という種類の女はいるからなあ。」
「いや、夜中だろ?全裸だろ?ごめんなさい!は、ないんじゃねえか?」
「それは先輩っすよ。先輩はとりあえず穴が開いてりゃ、
竹輪でもトローチでもいいんじゃないっすか?」
「お前なあ。ふざけるなよ!いくらなんでも、そんなに小さくはないぞ!」
「って、そっちですか!」
「ほら、下らねえこと言ってねえで、ちゃんと朔太郎のこと、考えてやろうぜ。」
「いや、もういいんだよ。きっと夢だったんだから。」
「いや、たとえ夢だとしても、そりゃあいい夢だった。うん。羨ましい。」
「でも、意外と楽しかったよな、高校生活。」
「ああ。突然のジ・エンドだったけど、それなりに楽しめたよな。」
「あ、先輩は最初の高3の夏、最高の高校生活でしたよね。
本校野球部初のベスト8。」
「あと一歩だったよな。
準決勝の最終回。先輩があのチャンスで見送り三振なんてしなきゃ。」
「ああ。どうして見逃すかねえ。せめて空振り三振だろう。」
「いや、もう、バット、振れる状態じゃなくってさ。腰を痛めてたから。
立ってるのがやっとだったんだ。」
「大体、いつ、腰、痛めたんすか。準々決勝っすか?
でも、準々決勝終わった後もぴんぴんしてたって話じゃないっすか。」
「お前、知らないのかよ?
先輩は、準々決勝まで、試合終了後はぴんぴんしてたんじゃなくって、
ビンビンしてたんだよ。」
「えっ?なにそれ?」
「だから、試合に勝って、ビンビンしてたの。」
「試合に勝ってビンビン?」
「ああ。それで、ブチュブチュして、ペロペロして、グジュグジュして、
それからズンズンして、パコンパコンして。
で、最後はドクンドクンして、青春を謳歌したんだよ。」
「試合後に青春を謳歌しんすか?幸太郎先輩。」
「まあ、な。」
「でな、準々決勝に勝ったその日は、
さっきのズンズンとパコンパコン、ドクンドクンで終わっとけばよかったのに、
欲を出して、3セット。それで腰を痛めたっていうわけ。」
「そんなこと、監督にも言えなくってな。だから無理を承知で試合に出た。」
「なんか自慢してるように聞こえるんすけど。」
「いやぁ、ほんと、惜しかったよなあ。彼女とはあれっきりだもんな。」
「彼女って、誰なんすか?」
「あれ?朔太郎、お前、ほんとに知らなかったの?この話。」
「ああ。幸太郎先輩に彼女がいたなんていること自体、初耳だ。」
「マジ?幸太郎先輩。朔太郎に教えなかったんすか?」
「だって、こいつ、ずっと学校休んでただろ?だから、
試合のことも知らないかと思って。」
「それは去年の夏の話。一昨年も去年も、試合くらい、見に行きましたよ。」
「マジ?」
「当たり前じゃないっすか。写真部のオレが家にこもっていてどうすんすか。」
「でも、なんでプレー中のオレの写真、見せねえんだよ!」
「あ、いや、フィルムを入れ忘れてて……。」
「お前、いつの時代のカメラマンだよ!」
「いや、先輩。実はこいつ、グランド、撮ってねえんすよ。」
「はぁ〜〜〜〜〜???」
「いや、毎年毎年、最後の夏を迎える選手たち、
を応援する女子高生たち、を取材していて。。。。」
「スタンドを撮ってたのかよ?」
「まあ、そういうことっす。
選手たちの精いっぱいのプレーに、手を握りしめ、
涙を堪えながら、祈るように応援する姿。
これこそ最後の夏にふさわしい。」
「なんだよ、写真部って、そっちの取材しかしないのかよ。」
「あ、い、いや、そ、そんな、ことは、、、」
「朔太郎って正直者だよな。」
「ああ。幼稚園児も騙せないタイプだね。」
「で、どうだったんだよ。お気に入りは見つかったのかよ。」
「うん。一人だけ。
実は、その子が、オレが気になっているっていうか、
公園で見た女の子にそっくりなんだ。」
「全裸で転げまわってた、っていう、あの露出狂の女にか?」
「ええ。あの夜、公園から帰ってから、どこかで見たような気がして。
で、ここ何年かのデーターを片っ端から探して、やっとのことで見つけたんすよ。」
「それが、オレが大活躍したあの夏のスタンドにいた、女の子だったってことか。」
「ええ。先輩がチャンスに見送り三振して、
せっかくの準決勝進出を逃したあの試合のスタンドにいたんです。
うちの野球部の帽子かぶって。」
「うちの野球部の?」
「そう。あれって、普通、野球部員以外は買えないだろ?」
「そうだなあ。関係者以外は、手に入れられないだろうな。」
「ってことは、その子は、うちの学校の野球部の関係者、ってことにならないか?」
「確かに。でも、うちの学校は男子校だぜ。」
「だから、兄妹関係とか、まあ、恋人とか、さ。」
「あ、そういうことか。で、聞いてみたのかよ。」
「いや、さすがに聞けないっすよ。
野球の試合そっちのけで可愛い女の子探して写真撮ってたんすから。」
「おまけに、野球部の関係者に露出狂の女の子がいるとなったら、さすがにやばいか?」
「う〜ん。でも、一昨年の夏の話だろ?
大会はもう終わったんだし。オレたちも、もう卒業しちまったし。」
「だけど、公園での露出ってのは、去年の夏の話っすよね?」
「そっか。じゃあ、オレが後輩たちに聞いてやろうか?
お前たちの姉か妹に露出狂はいないかって。」
「幸太郎先輩。それ、ほんとに聞けます?」
「あ、いや、確かに、だな。露骨すぎて、さすがに聞けないよな。」
「ね?だから、オレの兄貴が、電車の中で露出した人、いませんか?
なんて聞くわけないってことですよ。」
「あ、なるほどね。えっ?露出?電車の中で?」
「夜中の公園で?」
「まさか……。」
「……だよなあ。」