お持ち帰りされる人妻 (3)-4
チュ――。
唇が触れ合った瞬間、我に返った。だめだめだめ、これってキスだよね。ごめんなさいパパ、もうしませんもうしません――。ああそれにしても唇と唇が重なる感触。懐かしい感触、懐かしい匂い。ドキドキする。もう一度唇を重ねたい。だめだめだめだめ止まって止まって止まって止まってだめだめだめだめ――。
チュウ――。
ちょっと長い。見つめ合う。違うよこんなつもりじゃなかったよ、パパ誤解しないで。あー胸がキュンてする。それにお腹の下のほうもなんだかうずいている。身体の奥から熱いものが溢れてくるのがわかる。本当にだめだから、Fくん早くどいてよ、もう一度したくなっちゃうから――。
チュ、チュウ――ペロ、ペロペロ。
もっと長いキス。Fくんの舌が侵入してきた。息が苦しいから唇を開いただけなのに、私も少しだけ舌をペロペロしてしまった。こんなところで誰かに見られちゃったかな。アソコが熱い、きっとすごく濡れてる。おりものシートつけててよかった。あ、でもFくんにシート見られちゃうのは恥ずかしいな。って私、見られるようなことする気なの? したいの?
「イチゴ、甘くなった?」
「なった! めちゃくちゃ甘い!」
「よかったね」
「ゆきのおかげだよ。昔と同じ匂いがした。甘くて濃厚な匂い」
ああ、Fくんも私と同じこと考えてた。匂いの記憶って強烈だよね、絶対忘れないし一瞬でその当時のことを思い出してしまう。おかげで今は、美味しいはずのショートケーキの味がしない。
「香水の匂いでしょ?」
「いや、あれはゆき自身の体臭」
「やだ体臭なんて言わないで」
Fくんが私の脇の下あたりに鼻を近づけてきて、体の匂いを嗅ぎだした。大丈夫かな、私今どんな匂いさせてるんだろ。
「やっぱり甘い匂い。懐かしい匂いだ」
「ちょっと嗅がないで」
よかった、臭くはなさそう。
「じゃあゆき、こっち触らせてよ」
私のおっぱいを指差してまたニコニコしているFくん。
「じゃあって何? なんでどっちか選ぶみたいになってるの」
「いいじゃん」
「よくないよ」
「見惚れちゃうくらいすごく素敵でさ。触らせてくれたら一生の思い出になる」
大げさな言葉に笑ってしまう。
Fくんが手を伸ばしてくる。指先が今にも触れそう。
もうキスしちゃったし正直触らせてあげてもいいと思ってしまっている私がいる。いまさら変わらないよね。
「少しだけ、つんてするだけだから」
私が無言でうなずくと、Fくんの指先が私のおっぱいに触れた。優しくつんてされて、ぷにっと凹んだ。もう少し強くつんてされた。ぽよんて揺れて恥ずかしかった。
「揺れてるー可愛い!」
つん、つん、ぽよん、ぽよん――。思わず吹き出す。
「ちょっとやめて。つんつんしすぎ」
「すごい新鮮。昔はこんなに揺れなかった」
「んんー」
ああやだなあ。太ったって思われてるかも。パパごめんね、他の男の人におっぱい弄ばれてる。もう終わらせるから心配しないで。
「はいFくん。もう終わ……」
「もう少しいい?」
「……」
コクリとうなずく私。あれ?
手のひら全体で包み込むようにして揉まれてる。乳首が優しく擦れて気持ちいい。上から見下ろす私のおっぱいが、男の人のごつごつした手に揉まれて、ぷにぷに色んな形に変形してる。エッチな眺めだなあ。下からおっぱいを持ち上げるようにして、手のひらでぽよん。また持ち上げてぽよん。楽しそうに遊んでる。
こんなことならちゃんと許可もらってからデートすればよかった。でも急だったしまさかキスしておっぱいまで触られるなんて思ってなかった。もしデートしてきますって正直に話したらパパはどうしたのかな。Zくん以外の人とはさすがに駄目かな。元彼なんて特に嫌がられそう。あ、でも昨日のエッチではFくんに寝取られちゃうプレイで興奮してた。パパのことだからむしろ喜んでくれたかも。
「乳首のところも触っていい?」
「……いいよ……」
いいけど、このあとホテルに誘われても行かないからね。正直エッチしたくなっちゃってるけど、パパに無断でそういうことはしません。今日のところはバイバイして、パパには日を改めて話をしてみよう。「Fくんに誘われちゃった」って。あくまで冗談ぽく、本気じゃないっぽく。もうキスしちゃったことは内緒にして。あ、でも「拒否する間もなく急にキスされちゃった。ごめんなさい」なんて言ったら逆に興奮してくれるかも。
それにしても服の上から乳首刺激されるのってドキドキする。なんでだろう。お腹の奥が熱いよ、どんどん溢れてくるよ。もうゆき、昔みたいに、Fくんのおちんちんでおまんこをぎゅうぎゅうに押し拡げてほしくなっちゃってる。パパのじゃ届かいないおまんこの奥をつんつんノックして、気持ちよくしてほしい――。
ああ終わっちゃった。でもよかった。これ以上触られてたら危なかった。今ならまだ頭を冷やして無事に家に帰れそう。
*
店内での密やかな行為を楽しんだその後の二人は、差し障りのない会話を軽く交わすのみで終始無言だった。
外に出るなり、路地裏に引きずり込まれキスされてしまうゆき。Fのキスを受け入れつつも、この時点でもまだ、帰る意思は固かった。舌を絡めあう男女。暗闇で男女が身体をがさごそまさぐり合う衣擦れの音が聞こえてきた。男の手が女の股間に伸びている。やがて女は男にしがみつき、身体をガクガク震わせる。糸をひくような甲高い声が、路地裏に小さく響いた。
数分後、色とりどりのネオンが輝く夜の街へと消えていく男女の姿があった――。