引き抜きの交渉、お断りします-1
朱代×凛子、朱代×浪子のハードコア『口便器』シリーズはアニアックな層に売れまくった。
ストリーミング配信を含めると、どれだけの金が回ったのか分からない。
危険な指定広域暴力団組織のファミリーだったはずの朱代、浪子、そして凛子は、エロ産業のマスコットとして他の売れっ子AV女優を凌ぐ人気を博していた。
朱代は梶谷のもたらす撮影以外にも、週刊誌のインタビューやネットニュースの取材で引っ張りだこである。
ただし、朱代は梶谷の事務所の所属者扱いであるから、ギャラは一律五千円だ。
どんな小さなメディアの取材でも謝礼は万の位を切らないはずなのだが、差額はごっそり梶谷がハネていく。
「アハッ、お義姉さんの今月の収入は九二二九五円かぁ〜。あたしのほうが件数少ないのに一二六五七六円で勝っちゃってるね〜」
リビングで浪子が通帳を眺め、愉快そうに笑った。
傍らにはすっかり浪子のペットと化した柴田が侍り、全裸でヘネシーの瓶を持って酌をしていた。
「少ない収入なのに浪子ちゃん、お酒飲みすぎよ? っていうか飲むなら自分で買ってよぉ……」
なぜか酒類の購入は朱代負担なのである。
酔うほど色っぽくなっていく浪子は、片手でグラスを口に運び、もう片方の手で柴田のペニスをしごいた。
「あたしは柴田にお小遣いあげなきゃいけないから、他の出費まで手が回りませ〜ん」
「へへっ……すみませんね姐さん」
忠実な配下だった頃の面影は消え去り、ヒモというより男妾の卑屈さを身に着けた柴田が薄笑いする。
何もかも変わってしまった。
もう一人の忠義者、末松はあれからどこへ行って、どうしているだろう。朱代は思いを馳せた。
そんな折である。
関西帝龍会の大谷が、突然訪問してきた。