背信行為-3
「私のICカードじゃ開かないよね…。まさかね…アハハ…」
そう言いながら、試しに麻薬保管庫のセキュリティーにICカードを翳して見た。すると驚くべき事が起きた。エラーならピーッ、ピーッ、ピーッと言う警告音が流れるが、ピッと音がしてロックが解除されたのであった。
「えっ!?嘘でしょ…?」
開いたら開いたで足が竦んでしまった。まさかこんなに簡単に入れてしまうとは夢にも思わなかった彩香だが、好奇心旺盛な性格は抑える事が出来なかった。
「は、入ってみようかな…」
彩香は恐る恐る麻薬保管庫の開ボタンを押した。左右に開くドア。中は真っ暗だ。電気のスィッチはどこにあるのかと中に入った瞬間、ドアが自動で閉まる。
「く、暗っ…!ヤバイ、見えない…。ドアのボタンもどこにあるか分からないじゃん!ヤバイヤバイ、閉じ込められた…!?」
彩香は混乱した。もしこのまま誰も来なかったら、最悪死んでしまう。彩香は焦って壁を手で弄りボタンらしきものを探すが全然見つからない。
「ヤバイって!死んじゃうよ…!て、てかスマホ!スマホで…って、机に置いて来ちゃったじゃん!」
外に連絡する術もない。この時ばかりは自分の好奇心旺盛な性格を呪うのであった。
その時、突然の事で頭が回らなかったが、決して有り得ない事が起こった。体が固まる彩香。何故なら何かに自分の胸を掴まれたからだ。
「えっ…!?」
背後に人の気配がしたど同時に抱きつかれている事に気づいた。
「な、何っ!?」
中に人がいるとは思わなかった彩香。しかし間違いなく人だ。背後から強く抑え付けられるように抱きつかれ、胸を揉まれている状況に気付いた。
「だ、誰!?」
暗闇に聞こえる息遣いが恐怖を煽る。
「余計な事に首を突っ込みやがって…。馬鹿な女だ…」
低い声がエコーして不気味さを増していた。間違いなく人、そして男だ。彩香に緊張が走る。
「誰っ…!?」
抵抗を始めるが並の力ではなかった。男は力強く彩香の胸を揉み回していた。
「へへへ、いいオッパイしてんな…」
荒くなる鼻息に気づく。
「や、やめて…!離して!」
体を揺すり抵抗するも敵わなかった。彩香は瞬時に判断する。強い…と。嫌がり抵抗する彩香を抑えながら胸を揉み続ける男。体はかなり屈強である事が分かる。武術には自信がありたいていの男には負けない自信はあるが、だからこそ相手の強さを肌で感じる事が出来る彩香は、今非常にまずい状況である事を悟るのであった。