最後の迷い-4
(香澄の奴、そんなことまで真奈美に話したのか。
でも、それを何の抵抗もなく受け入れたのなら、真奈美のことは心配ないか……。)
「真奈美。じゃあ、もうお母さんと色々見せあったり、いろいろ……。」
「うん。見せ合ったり、交代でしたり、交換し合ったり。
楽しいことたくさんしちゃったよ。
だから、あとはお父さんとお母さんと真奈美と、3人で楽しめばいいんだよ。」
「真奈美。さっき言ってただろ?お母さん、久しぶりに明るかったって。」
「あ、うん。そうなんだ。なんかとっても嬉しそうだったっていうか、
う〜ん、元気に咲いてるお花みたい。」
「そっか。元気に咲いてるお花か。うん。そうかもしれないな。
でね、その、元気に咲いてるお花を奇麗だよって言って迎えてあげればいいのかな?」
「うん。真奈美は今日のお母さん、大好きだよ。
あ、もちろん、今までのお母さんも大好きだけど、
今日みたいなお母さんも、やっぱり大好きだな。」
「とし君としてるお母さんは、嫌じゃない、のかい?」
「え〜?なんで?幸せな気持ちになれるのが一番でしょ?
お母さんね、さっき、真奈美に言ったんだよ。
とし君を借りるけどいい?って。
だから、真奈美は〈とし君は真奈美だけのものじゃないよ〉って答えたの。
それは真奈美も同じ。真奈美はとし君だけのものじゃないんだよ。
だから……。??あれ?なんだっけ?」
「だから、お母さんもお父さんだけのものじゃない、
お父さんも、お母さんだけのものじゃない、ってことかな?」
「あ、そうそう。だから、としパパも、潤一さんも、同じ。
誰かを幸せにしてあげられるのが一番なんだよ。
だから、お母さんがとしパパとしたり、潤一さんが美奈子お姉ちゃんとしたり、
としママがとし君としたりするのも、当たり前のことなんだ。」
「真奈美。お母さんは……。お父さんが見ている目の前で、
そう、例えば、とし君や、とし君のお父さんに……。その、つまり。」
「あ、セックスしたらッてこと?」
「ああ。もしも、そうしたら、真奈美はどう思う?」
「どう思うって?だって、さっき、真奈美、お母さんに言ったんだよ。
とし君に後ろからされてるところ、お父さんに見てもらったら?って。
とっても幸せそうな顔してるから、って。」
「そ、そ、そうなんだ。」
「お母さん、みんなに、それがいいよって言われて、嬉しそうだったよ。」
「おじ様。わたしのお母様も、時々お父様の目の前で潤一に抱かれたりするんです。
それも、わざと驚いたり謝ったり、時には拒んだりしながら。
反対に、お母様の目の前で、お父様が見せつけるようにわたしを抱いたり、
敏明と潤一と、お父様を、わたしが一人で独占している場面を見せつけたり。
真奈美ちゃんも、そんな場面、時々見るんですよ。」
「そ、そうなのか?」
「うん。真奈美、最初は意地悪してるのかなって思ったんだけど。
潤一さんが紗理奈お姉ちゃんとしているところを見ていたら、
なんか悲しい気持ちや羨ましい気持ちや、憎たらしい気持ちとか、
いろんな気持ちになっちゃって。
でも、そのあとで潤一さんに抱いてもらった時に、すっごくすっごく……。」
「積極的になっちゃったのよね、真奈美ちゃん。」
「うん。真奈美の方から潤一さんの身体中舐め回したり、自分から入れちゃったり。
いつもと違って、ものすっごくこうふう?」
「興奮しちゃったんだよね。」
「うん。興奮しちゃった。
あ、でね、だから、としパパもとしママも、そんなことするんだなって。」
「…………。」
「あ、だから、お父さんも、お母さんがお父さんの目の前でとし君としてるの見たら、
ものすっごく興奮して、そのあと、ものすっごく積極的になるんだよ、きっと。」
「おじ様。真奈美ちゃん、凄いでしょ?
男と女の間にあるいろんな感情をちゃんと理解出来てるんですよ。
それも単なる知識としてじゃなくって、実体験を伴って。
だから、何を見ても大丈夫だと思いますよ。」
父親に話しかける紗理奈の顔を見て、真奈美が付け加えた。
「そうだ、お父さんが紗理奈お姉ちゃんとしてるとき、とっても幸せそうだったよ。」
「お父さんが紗理奈おねえさんとしたりしても、嫌じゃないのかい?」
「全然。なんで?あ、お母さんが怒ると思ってるんでしょ?
大丈夫だよ、お母さんもちゃんとわかってるし。
それより、紗理奈お姉ちゃん、お父さんのこと、大好きみたいだよ。ね?」
真奈美に自分の気持ちを言い当てられた紗理奈は頬を赤らめながら答えた。
「あ、え?あ、う、ええ。そうよ。
わたし、真奈美ちゃんのお父様のこと、大好き。
今日一日で大好きになっちゃったわ。」
「ねえ、紗理奈お姉ちゃん、お父さんとして、幸せだった?」
「もちろん。
あのね、お姉ちゃんの身体、真奈美ちゃんのお父さんと、相性ピッタリなんだ。」
「わ〜。紗理奈おねえちゃん、よかったね〜。」
「うん。真奈美ちゃん、ありがとう。」
「ほら、ね、みんなが幸せになれるのが一番なんだよ。」
「そっか。じゃあ、お母さんが来たら、よかったね、って言ってあげればいいのかな?」
「うん。真奈美、本当にそう思うもん。」
「よし、話はここまでだ。紗理奈さん。お時間を取らせました。」
「いえ、聞いていて涙が出てきて仕方がありませんでしたわ、おじ様。
じゃあ、奥様たちをお呼びしていいですね。」
「ええ。大変お待たせしました。」
紗理奈はインターホンを取った。
ほどなくして二つの部屋を仕切っていたパーテーションはすべてがオープンとなった。