最後の迷い-3
「あ、あの時、のことか。」
「うん。ほら、お母さんの後ろから、え〜と、なんだっけ。逆さ弁当?」
「逆さ弁当?何だい、それ?」
「ほら、お母さんを、ほら、真奈美が小さい頃に、
お父さんがおしっこさせてくれた時の格好。
あの格好で、お父さんが後ろからお母さんに刺してたでしょ?」
雅和の脳裏に、遠い昔の記憶蘇ってきた。
「…………。」
「で、抜けちゃった後の、お父さんの、今でも覚えてるんだ。」
「抜けちゃった後の、を、かい?」
「うん。初めは何だろうって思ったし。なんか棒か何かかと思ったんだ。
ヌメヌメ光ってたし、天井を向いてビクンビクンってしてて。
お父さんがお風呂から出てきて裸で歩いている時に見たのと、全然違くて。
真奈美、なんだろう、なんでだろうって思っててさ。
もちろん、ずっと思ってたっていうんじゃなくって、
この頃急に思い出しちゃうんだ。としパパとしてる時とかに。」
「…………。」
「で、としパパとした時に、あ、そうなんだって、思ったんだ。
だから、あの時のお父さんのもそうだったんだって思って。
だったら、お父さんの小さいのが大きくなるところも見たいなあって。
で、大きくなった時のを真奈美の中に入れたらどんなだろうなって考えてたんだ。」
「そんな小さい頃のこと、よく覚えてたなあ。」
「うん。で、さっき触った時、本当はすぐにわかったんだ。あ、これだって。」
「触った時?」
「うん。あ、真奈美、あの時からずっとこれが欲しかったんだって思ったんだ。」
「…………。」
「え〜と。小学校2年生?8歳?だから……。
7年間、ずっと待ってたんだ、きっと。」
「…………。」
「だから、そのこともお母さんに言わなくちゃだめだよね。
本当は、お母さんのなんだけど、真奈美にも貸してちょうだいって。」
「ああ。そうだな。それでいい。」
雅和は真奈美の言葉を聞いて、もう何も言うことがないような気がしてきた。
そう思いつつつも、雅和にはまだ気になることがあった。
真奈美が母親のことをどの程度受け止めているのかが気になったのだ。
真奈美は別の部屋で、母親と敏明のセックスを見たと言っていた。
二人で敏明のペニスを愛撫しあったとも言っている。
それはおそらく真奈美も香澄も、お互いに理解し合い了解しあった上での行動だろう。
母と娘は子宮でつながっているということをよく耳にする。
男にはまったく想像もつかない、母娘にしか、女同士にしか、
わからない微妙な価値観なり感情がそこにはあるのだろう。
敏明という一人の男を母と娘で共有することで生まれる、
愛憎や独占欲を越えた連帯感や愛情があるのかもしれなかった。
それはそれで良しとしよう。
しかし、これから真奈美が目にするのは、
夫婦の間に流れている微妙な感情の世界なのだ。
妻と夫、もともとは何のかかわりもない血のつながりもない、他人同士である。
性格や趣味嗜好、経済的な理由、地位、世間体などなど、様々な条件を越えた先に、
男女は、あたかもその間に【愛】という、まったく形のない、まったく実体のない、
そしてうつろいやすいものに【絶対】という言葉を添えることで結びついている関係だ。
そこには信頼や思いやりといった感情もある一方で、嫉妬や妬み、過剰な期待、
価値観のずれ、マンネリなどなど、様々な問題をはらみながら、
右へ左と揺れ、時に修復し、時には壊滅的に崩壊する。
今これから雅和と香澄が演じようとしている【愛のカタチ】は、
そうした【しがらみ】の上に立って、
【嫉妬心】や【背徳感】という刺激によって、
【マンネリ】という巨大な壁を越えようともがく夫婦の姿なのだ。
果たしてそれを15歳の少女が受け止め、受け入れることができるのだろうか。
真奈美は、普段の母親からは到底想像できるはずのない、
つまりは娘には決して見せることなどない、
女そのものの姿を見ることになるかもしれない。
香澄は娘の前で男に抱かれるという一つの壁は越えたようだ。
しかし、この後には、夫の目の前で他の男に抱かれるという、
子どもの目など全く気にすることのない、
親という意識を捨てた雌そのものの姿になるのだ。
そして父親である自分も、親としてではない、
雌との関係を修復するための雄そのものの姿を見せることになるだろう。
真奈美が知るにはまだまだ早すぎる、そして、理解するにはあまりにも深すぎる、
夫婦にしかわからない世界を、香澄と雅和は今から始めようとしているのだ。
そのことをどう伝えれば真奈美が理解できるのか、雅和は言葉を選びながら話し始めた。
「あともう一つ。」
「え〜と、なんだっけ。」
「お母さんをどう迎えるか、だ。」
「あ、そうだった。」
「真奈美。これから真奈美の前に現れるお母さんは、
きっと今までのお母さんとはちょっと違うと思うんだ。」
「今までのお母さんと違う?だってさっきも会ったよ。
それに、とし君のを交代で舐めたりもしたし。
あ、それに、とし君の指で擦られてたら、お母さん、お漏らししちゃったんだ。
真奈美も少し前に、としパパにされたことあったんだけど、
お母さん、とっても気持ちよかったみたいだよ。」
「ま、真奈美は、そ、そんなお母さん見て、嫌じゃなかったのかい?」
「えっ?なんで?だってお母さん、気持ちがよくってそうなったんだし。
それに、とし君もすごいって言ってたし。
あ、そうだ、思い出した。お父さんも舐めるのが好きだって言ってた。」
「誰が?」
「お母さんだよ。お母さんは手で触るくらい軽い存在じゃなくて……。
あれ?う〜ん。でも確かそんなこと言ってたよ。
舐めるくらい特別な存在なんだって言ってよく舐めてくれたって。」