新たな出会い-1
「先に戴いたわ、今日はありがとう」
静江は薫に感謝をこめて礼をいった。
「よかったわね」
ぶっきらぼうに言葉を返すと
「母さん、カルチャーへ行ったの・・お友達作ったらどう」
「そうね、卓球クラブもあるようだから行ってみるわ」
薫の不機嫌な様子を察して返事をすると食器を流しに運んだ。
その晩、薫は話があると樹を部屋に呼び問いただした。
「ねえ、母さんとできてるの?」
「何を言うんだいきなり」
樹は馬鹿なこと言いうなと言わんばかりに声を荒げた。
「そんなに興奮しないで、正直に言って・・・私には分かっているのよ」
「・・・・」
「今回ばかりは知らなかったことにするわ、相手が私の実母、信じられないけど現実に起きてしまったこと、母にも責任はあるわ。
「こんなこと人前にできないことよ、私が仕事を優先してあなたを寂しい思いをさせたのも事実、反省するわ」
薫は冷静に判断した結果の言葉だった。
「俺は寝る、もういいだろう」
樹は詫びることもなく不貞腐れたようにベッドに入った。
静江は久しぶりにカルチャーセンターに出かけた。
一階フロアーの受付案内を訪ねた。
「すみません、卓球の事でお聞きしたいんですけど」
年配の男が応対した。
「入会の前に見学できるのですか」
「ええできますよ、この奥でやってます案内します」
男は静江を見てえらい若い婦人が来たと思い喜んで案内を申し出た。
「お見掛けしない方ですね、最近こられたのですか」
「もう一年になります、娘の家に世話になってます」
「そうですか、加入の方はほとんどが60歳以上の方ですよ」
そう言って部屋へ案内した。
卓球台が四台置かれ十数名がいたが年配の男性や婦人がいた。
「矢野さん、見学者がみえました、よろしく」
数名の男たちが静江の方を一斉に見た。
(えらい別嬪じゃないか、ええ体してるな)
ほとんどの男たちはいやらしい視線で静江を眺めた。
「矢野といいます、世話人です是非参加ください、こんな年寄り連中ですが」
「いいえ、皆さんとても元気そうで楽しそうですね」
静江は笑みを浮かべて言った。
「まだお若いんでしょ、卓球は初めてですか?」
「学生の頃少し・・・でも最近はやってません」
「そうですか、後から私と少しやりませんか」
「いいんですか来たばかりなんですけど」
そんな会話をしながら少し立ち話をしていた。
すると台が空くのを見て矢野はラケットを静江に渡すと台に案内した。
「いきますよ」
矢野は優しいサーブを出してきた。
静江は軽いラケットさばきで球を返してラリーを始めた。
周りの者たちも手を休め二人に見入った。
ジーパンを通して静江のむっちりした尻と腿と丁シャツから伺える豊満な胸が目を引いた。
(なかなか卓球上手じゃないか、しかしええオナゴじゃねえか)
矢野は内心ムラムラするものを感じながら相手をした。
「奥さん上手いですな、是非加入ください、あなたのような方が入ってくれましたら会員も増えます」
矢野はそう言って入会を強く勧めた。
「ありがとうございます、是非お仲間にしてください」
「そうですか、ありがたい、申し込み用紙は受付でお願いします」
矢野はそう言いながら受付まで寄り添うのだった。
その夜食卓に着くと静江の方から今日のカルチャーセンターでの話を切り出して卓球クラブへの参加を告げた。
「お母さん、まだ若いんだからいい人見つけて、私たちは応援するわ」
薫からの言葉であった。
樹は無言であったが静江は察して言った。
「そうね・・薫の言うとうりね」
樹との思い出はやはり立ち切るべきだと思った。
そして翌日スポーツ店に自転車で出かけた。
都会のスポーツ店は若い者からシニアまで混雑していた。
ラケットはともかくユニフォームにはこだわった、最近は色柄も豊富で目移りして決めかねていたがそれを見た若い店員が声をかけてきた。
「奥様、これなんかどうですか・・お綺麗ですしお似合いですよ」
「そうかしら」
体に宛がってみた。
「本当にお似合いです」
その言葉で静江は購入した。
家に帰り部屋の姿見の鏡にユニフォームを着て写して見た。
(いいわね、似合ってる)
翌日さっそくカルチャーセンターに出かけて行くのだった。