刑事の妻-7
「上原さんは、マギー以外に指揮を取らせる気がない。マギー以外に適任者はいないと決めてるはず。それだけマギーを信頼してるし期待してるの。でも当の本人は恋人と離れ離れになってるだけで覇気がない、上の空、身が入らない。それでは自分でやるしかないじゃない、上原さんが。だいたい上原さんが杉山君を連れてきた事に何か気づかなかったの?ただ単にマギーを喜ばせる為に連れてきたと思った?違うでしょ!寂しさを埋めてあげればマギーが元気を取り戻して本来の実力を発揮して事件を解決に導いてくれると考えたからだよ。それなのにマギーは実力を発揮するどころかどんどん愛に溺れて言ってる。挙句、事件解決よりも杉山君との結婚に気持ちが傾いてる。そりゃあ女だから結婚に憧れるのは当然。悪い事じゃない。でもマギーは今、重大な責任を背負った刑事なのよ?警察官なのよ?あなたそれを忘れてるわよね??」
「…」
グウの音も出なかった。さとみの言っている事は間違っていない。正しい。警察官でありながら捜査を二の次に考え、自分の幸せにばかり目が向いている無責任さを痛感した。さとみの正論に何も言い返せないマギーであった。
「ねぇ、上原さんて今、どんな1日過ごしてるのか分かってる?」
さとみは少し語気を和らげて聞いた。
「うん。仕事終えて、家に帰って家事をこなして、寝るのは1時か2時。でも朝5時には起きてお弁当作ったりみんなの朝の支度をして、休む間もなくまた仕事に来てる。仕事も家庭も100%で頑張ってる。凄い人…。」
先日華英から泊まりに行った時の話をチラッと聞いたマギー。話を聞いただけでも仕事と家庭を両立する凄い人だと改めて感じた。しかしさとみは溜息をついた。
「本当にそれだけだと思ってる?」
「え?」
「それだけでも確かに凄い。でもそれだけじゃない。上原さんは20時までこの県警本部にいる。それからどこに向かうか知ってる?」
「自宅じゃ…」
「自宅の前にある場所へ寄ってるの。」
「ある場所…?」
「どこだと思う?」
「…どこ?」
マギーはさとみの言った場所に驚きを隠せなかった。
「警視庁よ?」
「け、警視庁…!?本庁って事!?」
さとみは頷いた。マギーの頭の中はパニックになった。まさか深夜に警視庁に戻り、またこっちに来ている…、その事実にマギーは驚きを隠せなかった。