その1 堕ちた美人歌手-4
いつしか亜希子のファンでもあったマネージャーの折山との立場は逆転していた。
亜希子に仕事を取る為にと言い寄られ、
その代価として折山との肉体関係を持ってしまった。
亜希子には人気が落ちたとはいえ、ステージでは一時期には男達を虜にした色香があった。
豊満なその女を初めて抱いたときマネジャーとなった折山は夢かと思った。
憧れの豊満な歌手の八嶋亜希子を抱いたからである。
しかし、幾度と抱き、その味を覚えてしまえば、亜希子もただの女だった。
女好きな折山は前ほどには亜希子を抱く気にはならない。
久しぶりに地方の公演があり、その夜に亜希子は折山に抱かれていたが、
小さい頃から歌が好きな亜希子はそれまでに男を知らなかった。
亜希子にとって、折山は初めての男である。
その土地の安ホテルで亜希子は折山に裸で抱かれていた。
最近、亜希子はようやくセックスの悦びを知るようになっていた。
荒々しい折山に抱かれながら、
膣を彼の太いペニスに突かれながら幾度となく逝かされていた。
「なあ、亜希子」
「はい、折山さん」
「今日は久しぶりの公演だったね」
「ええ、数える程度のお客様ですが、嬉しかったです、有り難うございます」
「じつは、この後の仕事はどこからも来ていないんだよ、多額の借金もあることだし」
「ええ………そうですね」
たしかに、数少ない公演ではチケット等の実入りが少なく、
ショーを開いても殆ど赤字だった。
その為に借りた会場の費用などの借金も少なくない。
「それでだ、もうこれ以上私も亜希子と付き合っていられないかもしれない」
「そ、そんな! では、このさき私はどうなるのですか?」
「じつは、亜希子を気に入っている人がいてね、
面倒をみても良いと言う人がいるんだよ」
「……そうですか、どんな方ですか?」
「資産家でね、亜希子の保証人になって借金を肩代わりする代わりに、
彼の女になるってことだ」
「えええ………その方の女に……」
「どうかな、亜希子にとって損な話ではないと思う、
それに歌手として続けても良いといっているんだ」
「そ、そうですか……
」
折山はもう亜希子が金を稼ぐ資質がないと見て亜希子に多額の借金をさせ、
或る男にその保証人になってもらい、
その手付金を貰って別れようと言う魂胆である。
借金の保証人になったのがこのクラブの中にいる霧島裕太だった。
落ちぶれかけた亜希子を助けて欲しいと霧島に折山が話を持ちかけたからである。
或る日、亜希子と折山、そして霧島は彼の事務所で向かい合っていた。
目の前の霧島は少し年配で、
腹も出ていてどう見ても亜希子の好みのタイプの男ではなかった。
しかし、その眼光は鋭く亜希子は威圧されそうだった。
(私はこの人の女になって抱かれる………)
そう思うだけで気が遠くなりそうだった。
しかし、現実を見据えて生きていかなければならない。
親も今はなく、コネもない自分が生きていくにはこれしかなかった。
かといって死ぬ気にもなれない。