犯人像-7
石山が女子署員にコーヒーを頼むと、暫くして花咲由良と言う交通課の白バイ警官が運んで来た。
「あれ?どうして山口が持って来たんだ??」
山口は優秀な白バイ警官だ。コーヒー運びと言う雑用を望む人物ではなかった。山口は緊張した面持ちで答える。
「あ、あの…上原警視総監にお会いしたくて…」
見るからに全身ガチガチである。若菜まで緊張しそうだ。
「私と??」
「は、ハイ…。」
「別にいつもそこらをウロチョロしてるんだから話しかけてくれればいいのに。」
「そ、そんな…、恐れ多くて…。ずっと尊敬してましたから…。」
「なーに言ってんのよっ!2019年度、全国白バイ技能競技会のチャンピオン様が♪」
その言葉に由良は驚いた。
「わ、私の事、知ってていただいたんですかっ!?」
「勿論♪私ね、デキる女は気になるし大好きなの。」
「そ、そんな…滅相もないです!でも光栄です!」
「まーまー、そんな改まらないで。さ、座って?一緒にコーヒー飲みましょ?」
「い、いいんですか!?でも…」
「あ、いいの。石山さんは自分で持ってくるから♪」
「はっ!?」
「あらやだ、石山さんて女性を大切にしてくれる先輩じゃないですかぁ♪」
「ちっ、こんな時だけ後輩ヅラしやがって。分かりましたよ、自分の分は自分で持って来ますよー。」
石山はふてくされて自分の分のコーヒーを取りに行った。
「フフ、ところで初めて顔見たけど、美人よね!」
「い、いえ…、そんな事ありません。化粧っ気もないし。」
「そこがいいんじゃない!ホント、働く女のカッコ良さが物凄くいいわ?」
「あ、ありがとうございます…。でも上原さんの足元にも及びません。」
そう言った時、石山が戻って来た。あー疲れたと言ってソファにドスンと座った。そんな石山を見てフフッと笑った若菜。
「もー、こんないい子、何でもっと早く紹介してくれなかったんですかぁ、先輩ぃ〜」
「…、お前、最近マギーも華英もあんまり敬ってくれないから、山口に尊敬されて気分いいんだろ?」
「アハッ、それもあるわ。特にマギー。あいつ、完全に私のコト、ナメてるし。」
「マギーは昔からあんな感じだろ。」
「そうなんだけどねー…、でも由良ちゃんみたいに敬ってくれると嬉しいのよー。由良ちゃん、今度お洋服買ってあげるからね♪」
「あ、ありがとうございます!」
石山は苦笑し、
「お前は姑か??」
と言った。
「でも山口は優秀だ。上原から色々学ぶのもいいだろう。仲良くしてもらえ。」
「はい!」
深々とお辞儀をする由良に、根っからの性格の良さが出ていた。