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是奈でゲンキッ!
【コメディ その他小説】

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是奈でゲンキッ! 番外編 『シークレット・ガールズ』-6

 彩霞は「はっ、またけっこうな物を。って言うか、おまえ何時からそういうのに興味をもったんだ」などと、少し嫌味(いやみ)ったらしく尋ねたりもする。
「なに言ってんのよ! SLのナンバープレートって言ったら、マニアの中ではお宝中のお宝なんだからね! 是非とも手に入れたい『レアアイテム』の一つなんだよ。インターネットのオークションなんかじゃ、一枚何十万円って値段がついてる物も有るんだからね!」
「へ〜そんなもんかねぇ。まぁ気持ちは解らなくもないがぁ、俺が金持ちだったら、ナンバープレートなんてケチ臭い事言わず…… やっぱこいつだな、このでっかいSLをまんま買い取って庭に飾ってやるぜ。ハッハッハァ!」
 そういいながら彩霞は、目の前に聳え立つ、でっかいSLの動輪を ”ペタペタ”と叩くのだった。
 と、その時である。
 まさか彩霞が叩いたせではないと思うが、突然、動かないはずのSLが、耳を劈(つんざ)かんばかりの勢いでもって ”ボーッ”と汽笛を鳴らしたかと思うと、激しく蒸気を噴出し、煙突(えんとつ)からも真っ白い煙を出し始めたではないか。
 さすがの彩霞もこれには驚いたと見える。大きく口を開けたまま、腰を抜かして尻もちを付くと。
「なななっ何だあぁーーっ!」
 慌てて尻を引きずりながら、後づ去っていた。


 SLから吹き出た煙は、あっと言う間に博物館の建物全体に広がると、辺り一面を白一色の世界に変えた。突然の出来事に、館内に居た人達もパニックを起こし、雪崩のように連なって非常口へと殺到する。
 彩霞も、こうしては居られない、早いとこ逃げなければと、是奈たちを探し館内を見渡してみたが。
 どうやら深い霧でもって世界が覆い尽くされたかのような状況に、全く持って視界を遮られた様子である。右も左も解らずに、
「おーい都子ぉー、無事かー!? 真由美ぃー! 是奈ぁー! 返事しろーーっ!!」
 と、叫ぶのが精一杯だった。
 彩霞は、煙が目に染みて、止まらなくなった涙を拭き擦りながら、是奈たちの安否を気遣い叫んで居た。すると、そん彼女のすぐ近くで突然、”ガシャーン”と、豪快にガラスの割れる音がしたかと思うと、誰かが慌てて走り去る気配を感じた。
「誰か居るのかっ! 今度はいったい何が起こったんだっ!!」
 彩霞は叫びながら、音がした方へと、這(は)いつくばって寄る。すると。
「危ないっ!」
 是奈が、彩霞の身体を後ろから抱き抱えて、叫んで来た。
「きゃっ!」
 彩霞も一瞬、驚き、声を上げる。
「中村さん、だいじょうぶ! ケガは無い?」
 聞き覚えのある声に、彩霞はホッとすると、腰の辺りに回された是奈の腕を、大切そうに抱えて。
「是奈! よかったぁ無事だったんだなっ! 都子はっ!? 真由美も無事なのか!? あいつら何処へ行ったんだっ!?」
 残り二人の安否を、是奈に尋ねていた。
「藤平さんならさっき電話してくるって、外に出て行ったから、きっと無事だよ」
「都子はっ、あいつはどこへ行ったんだ、さっきまで俺といっしょだったんだぜっ!」
 聞かれて是奈は、いくぶん薄らいできた煙を掻き分けるようにして、辺りを見回しながら。
「う〜ん…… 先に逃げちゃったみたい。もうここには誰もいないよ」
 そう告げる。
「都子のやつぅ〜! 昔っから逃げ足だけは速かったからなぁ。っつうかぁ〜友達を見捨てて逃げるなっつぅのっ!」
 彩霞は、恐らく都子の事だ心配は要らないだろうと、一安心と言ったところなのだろう。いつもの様に冗談まじりの憎まれ口を叩きながら、それでもホっと胸を撫で下ろして居た。
 どうやら火事では無い様である。立ち込めた煙も特に害は無く、どうやら惨事には成らずに済んだ様子であった。


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