是奈でゲンキッ! 番外編 『シークレット・ガールズ』-10
「ばかなぁ……有り得ないっ! 普通の人間がマシンガンの弾を至近距離で喰らって、死なないはずがない…… こ、これはっいったい!」
不死身のガーディアンZに、さすがの都子もたじろいだ様子である。突き出したマシンガンの腕を震わせながら、2歩、3歩と、後ず去ったりもする。
だが、ガーディアンZが握り締めていた小さなドリンク剤のビンを見つけるなり、なるほどそう言う訳かぁと、手品の種でも見つけたかの如く。
「『細胞強化活性剤』……そう言う訳かっ。聞いた事があるわよっ、政府の秘密研究機関が、人間の身体機能を高める秘薬開発に成功したって。どうやらあんた……その秘薬の試験者のようね。つまりは『強化人間』って訳か。……しかしその薬は、普通の人間には扱えないとも聞き覚えがあるわ。まさか……貴様は唯一の成功例って訳っ!?」
「貴方こそ何でそんな事を知ってるのよ! これは第一級の国家機密事項のはずよっ。……どうやら貴方、その左腕のマシンガンと言い、ただのドロボウじゃなさそうね」
「だとしたら…… どうする」
「是が非でも、貴方を捕まえるのみだわっ」
「ほざくなあーーーっ!」
最早、問答は無用と言わんばかりである。ミーヤは……否、都子は右腕を大きく振り翳すと、空かさず振り下ろし、地面へと手刀(てがたな)を叩きつけた。
振動と共にアスファルトが捲り上がり、その手刀(しゅとう)の巻き起こす衝撃波が足元を伝わり、ガーディアンZに襲い掛かって行く。と同時に、ガーディアンZもまた、その拳にオーラのような光の束を集めて、それを都子に向かって撃ち出していた。
真っ向からぶつかり合う互いのパワー。弾け(はじけ)飛んだエネルギーは渦を巻いて、街道沿いのポプラ並木を根こそぎ薙倒した。
爆発の衝撃波はさらに、ガーディアンZと都子の身体をも空中へと投げ飛ばし、街道を行き交う自動車の群れをも弾き飛ばし、聳えるビルの群れにまで傷跡を付けていた。
ガーディアンZは攻撃の煽りを食って、拾い道路の反対側に聳え立つ、ビルの近くまで飛ばされたが、飛ばされながらも体勢を立て直し、ビルの側面を蹴って、その勢いでもって再び拳を握り締め都子へと急接近した。そして、目にも留まらぬ速さでもって、連打を繰りだすや、都子に猛攻を浴びせるのだった。
都子はそんなガーディアンZの攻撃を、軽やかなフットワークで交しながら、
「くらえーーっ!」
と、左腕のマシンガンを打ち捲くり。
ガーディアンZは、そのマシンガンの弾を素早い動きで掻い潜ると、彼女はミーヤの懐へと飛び込んで行った。そして必殺の一撃とばかりに繰り出す、右ストレート!
「馬鹿めっ! 踏み込みが甘いわっ!」
だが都子はそれを半歩下がって、難なく交す。……が。
「なら更に踏み込むまでっ!」
と、ガーディアンZは身体ごと体当たりを食らわし、都子を抱え込んで、勢い良く押し倒す。
「観念して佐藤さん! 貴方が例えサイボーグだったとしても、あたしには勝てないのよ!」
ガーディアンZは都子を押さえ込んだまま、降伏するよう、勧告する。
「それで勝ったつもりっ!」
都子も往生際が悪い。自身の身体に馬乗りになっているガーディアンZを振る落そうと、彼女に膝蹴りを入れて来る。がしかし、そんな都子の膝関節さえ押さえ込んで、ガーディアンZは完全に都子の動きを止めたのだった。
「お願い都子ちゃん…… もう止めて!」
涙ながらに訴えるガーディアンZ。
「だからぁ…… それで勝ったと思わないでって、言ってるでしょうっ!!」
その瞬間。
押さえ込まれていた都子の太ももがパックリと口を開け、中から飛び出して来た『マイクロミサイル』をもろに喰らい、ガーディアンZはその身を宙へと吹き飛ばされた。さらには数発のミサイルが彼女を襲い、爆風に煽られ、勢いよく地面へと、その身を叩き付けられて居た。
「たかが強化人間風情が、あたしを捕まえようなんざっ、10年早いのよ!」
都子はそう言うと、更に追い討ちを掛けるべく、右足に仕込まれていたマイクロミサイルを全弾発射する。